テレ東“財界のフィクサー”許永中氏TV初取材「ガイアの夜明け」P語る極秘舞台裏 局内隠語も

[ 2017年12月26日 11:00 ]

「ガイアの夜明け」がテレビ初インタビューに成功した“財界のフィクサー”こと許永中氏(C)テレビ東京
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 テレビ東京が、戦後最大の経済事件となったイトマン事件(1991年)で特別背任などの罪に問われた“財界のフィクサー”こと許永中氏(70)のテレビ初インタビューに成功した。26日放送の「ガイアの夜明け」(火曜後10・00)の1時間半スペシャル「追跡!マネーの“魔力”」で放送される。肉声が世界に流れるのも初といい、大きな注目を集めそうだ。番組チーフプロデューサーの野田雄輔氏(47)が企画意図、隠語を使うなどして局内でもトップシークレットで進められた取材の舞台裏を明かした。

 今年11月下旬、ソウル市内。シルクハットに、黒いコート…。指定の場所に現れた許氏の第一声は「アンタら、東京から来はったの?」。取材クルーをグルッと見回す。「何でも聞いてください」。“裏経済の帝王”という異名とは裏腹に、フレンドリーなおじいさんという印象。しかし、約4時間に及んだインタビュー中、許氏の眼光が鋭く光る瞬間が何度もあった。

 中堅商社の旧イトマンから巨額の資金が流出した「イトマン事件」。約3000億円が不正取引の上、闇経済に消えたとされる。イトマンに絵画取引を持ち掛け、商法の特別背任と法人税法違反(脱税)の罪に問われた元不動産管理会社代表が許氏。2005年10月、最高裁第3小法廷は上告棄却を決定。懲役7年6月、罰金5億円の1、2審判決が確定した。

 12年末に本人の希望により、服役中の栃木・黒羽刑務所から韓国に移送され、13年9月にはソウル市内の刑務所から仮釈放された。仮釈放後の動向は不明。現在はソウルの名門・高麗大学と組み、介護に使う新製品の開発などにベンチャー投資をしているという。今回はイトマン事件、フィクサーと呼ばれた自身の生い立ち、バブル時代に経験した“カネの魔力”などについて激白した。

 イトマン事件の時、許氏は43歳。「43歳で、私は今でも(時間が)止まっているんです。頭の中が止まっているんです。あの時代というのは、私にとってはつい1週間、1カ月前の時代です。私の中では43歳の時のあの事件で、私の体内時計は止まっているんですよ」――。

 許氏へのインタビューを企画した理由について、野田チーフプロデューサーは「今年、2017年はアベノミクスの効果もあり、株価・不動産価格が上昇。あのバブルの時代を思わせる現象が、いろいろありました。そして、平成の時代が終わる見通しが立ち、この約30年の日本経済を俯瞰する番組を年末に制作したくなりました。『追跡!マネーの魔力』というタイトルだけがずっとあって、何を、どう取材するかは取材班のネタ待ちだったんです。その時、番組でよく取材させていただく大企業の社長とかではなく、裏も表も知り尽くした“怪物=モンスター”みたいな人を取材できないかなと思っていました」と説明。

 同僚ディレクターの1人が極秘に許氏サイドと接触を取っており「そこで、ビビッときましたね。この平成約30年の経済史の中で、最も闇に包まれ、何かをカネの力で動かしたであろう“怪物”。番組テーマの『追跡!マネーの魔力』にふさわしいと判断して、一気に取材に動き出しました」。今年8月頃から番組特務取材班と同局報道局がタッグを組み、粘り強く交渉。「われわれもダメ元というのが、本音でした。ただ、約4時間に及んだインタビューの長さからも、許氏には今だからこそ、日本の皆さんに対し、語りたい何かがあったのだと推察されます。あとは、平成バブル時代を振り返り、マネーの魔力を追跡するという番組趣旨が刺さったのでしょうか。許氏自身も日本経済の大きな節目を感じたのかもしれません」と取材OKが出た要因を振り返った。

 大スクープだけに「最も気を使ったのは情報管理です。他局に察知されて、取材の後に交渉され、ニュース特集などで先出しされるのを最も警戒しました。局内でも、この件は私を入れて3人くらいしか知りません。『K』という隠語を使って会話していました。また、番宣が流れる前の局内説明資料などは、すべて回収してシュレッダーにかけ、徹底しました」と“厳戒態勢”ぶりを明かした。

 撮影にもこわだり。番組史上、カメラマン歴が最も長いベテランを配置し「『許永中』という平成の怪物とカメラを通して向き合った息遣いが伝わってきます。許氏の言葉、その間の一瞬の表情を逃さないように対峙したカメラワークも、ぜひ留意してご覧ください」と呼び掛けた。

 最も印象に残った許氏の言葉は「(日本人は)おカネに負けている人が多いからね。カネさえあれば、極端な話、この世で、できないことはない」。野田氏は「これは一見、誰でも言える分かりやすい言葉です。が、許氏が言うと、全く意味合いが違います。戦後最大の経済事件で、3000億円が闇に消えた。政財界のフィクサーとして許氏を頼りにする人も多かった。この言葉は何を意味するのか?この平成約30年の経済史を知る上でも、ますます取材したくなりました」と再インタビューに意欲を示した。

 許氏のテレビ取材に成功したのは今回が初。「映像の持つ力、その価値を改めて感じています。新聞・雑誌にはない、テレビが、動画のみが持つ絶大なインパクトです」とスクープの意義を語り「視聴者の皆さんに、財界のフィクサーとも呼ばれた男の、これまで聞くことのなかった『肉声』、見たことのなかった『容姿』を初めて視聴していただきながら、この年末に平成約30年の日本経済とは何だったのか、思いを馳せていただければ幸いです。また、インタビューだけでなく、本邦初公開の許氏の生い立ちから今までの写真も入手し、さらに分かりやすく構成。経済報道番組を標榜している以上、テレ東らしくお金にまつわるエピソードも追加取材し、許氏の知られざる秘話満載で構成しております」とアピールしている。

 ◆野田 雄輔 1993年入社以来、24年間、報道局一筋。「ワールドビジネスサテライト(WBS)」のディレクターを経て、06年から「ガイアの夜明け」のディレクターを務める。17年7月からチーフプロデューサー。WBS時代、ガイアにネタを持ち込み「潜入!北朝鮮」(03年6月3日)を担当。番組史上初の10%超え(10・5%、ビデオリサーチ調べ、関東地区)を達成した。

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