舞台「少女ミウ」堀井新太、岩松了氏“1000本ノック”で成長「新しい発見」

[ 2017年5月21日 08:00 ]

堀井新太インタビュー(上)

舞台「少女ミウ」に出演する堀井新太。作・演出を務める鬼才・岩松了氏の稽古に真剣な表情で臨む
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 2014年後期のNHK連続テレビ小説「マッサン」などで注目を集める俳優・堀井新太(24)が舞台「少女ミウ」(21日〜6月4日、東京・下北沢=ザ・スズナリ)に出演する。作・演出は鬼才・岩松了氏(65)。「新しい発見がたくさんある演出を受けています」と稽古に汗を流した。

 テレビ朝日「時効警察」の課長など、名脇役としても知られる岩松氏。1989年、演劇界の芥川賞と呼ばれる第33回岸田國士戯曲賞を「蒲団と達磨」で受賞。人間の内部に潜む悪意、狂気、滑稽さを何気ない日常会話で描く唯一無二の世界観で演劇ファンを魅了し続けている。新作がキャパ200席に満たない濃密な空間、ザ・スズナリで上演されるのは2011年「国民傘」以来6年ぶり。若き高橋一生(36)や星野源(36)が出演した05年の「アイスクリームマン」(ザ・スズナリ)など、定期的に若手とタッグを組んでいる。今回も10人の期待の星が集まった。

 「少女ミウ」は一家心中の生き残りの少女・ミウ(黒島結菜)をめぐる青春群像劇。堀井が演じるのは、ミウを取材するドキュメンタリー番組のアンカーマン・広沢。「ミウの家族のお話とテレビ局のお話が並行し、過去と現在を行き来しながら物語が進むので、広沢がどういう存在なのか、徐々に見えてくると思います。最終的には、いい意味でお客さんを裏切れるようにしたい」と意気込んだ。

 岩松脚本&演出は初体験。同じシーンを何度も繰り返す稽古は“1000本ノック”の異名を持つ。「僕の考えは全部捨てて、岩松さんに全部身を預けています。役者って、どうしても芝居をしようとしてしまう生き物だと思いますが、岩松さんの演出はそこを削ぎ落としてくれる。とにかく演じない。実際は演じているんですが、ひたすら同じことを繰り返すことで(芝居が)日常になっていくんです」と体感した。

 抽象度が高く、難解な部分もある岩松脚本。過去に岩松作品に出演した俳優のインタビューを読み返しても「皆さん、最初は分からないとおっしゃっている。それが、ひたすら同じことを繰り返すうちに台本の意図が見えてくる。例えば今回、稽古で『机を触りながら、しゃべって』と指示がありました。その意味を聞いたら、ダメなんです。意味なんか分からなくていい。とりあえず、やる。稽古が進むに連れ、机を触りながらしゃべっていたのは、こういう意味だったんだと、どんどんつながっていきました。人がしゃべっている時って、何かを触りながらだったりしますよね?それが、後の伏線につながったり。今回は新しい発見がたくさんある演出を受けています。岩松さんほど細かく見てくださる方は初めてかもしれません」と岩松演出の真髄を明かした。

 「マッサン」で父子を演じた風間杜夫(68)にアドバイスを乞うた。風間は「シダの群れ」「家庭内失踪」と岩松作品の常連。「『はい』だけ言っておけ。分かっていないのに『分かりました』と言うと、怒られるから」と助言され、実行した。これだけ聞くと、岩松氏は厳しい人に思えるが、堀井は「1000本ノックの怖いイメージとは全然、違います。一緒になって楽しんで演出してくださります。メチャメチャ優しくて、思いやりがあって、愛がある人です」。その一例が第5場の1シーン。全体的にシリアスな場面が多い役だが「広沢という人物の人間味が出る場面。愛らしく見えるように、ある芝居を2回してもいいですか?と岩松さんに提案しました」と工夫も凝らしている。“岩松塾”で鍛えられ、一段と成長を遂げる。

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