勝新太郎さん もう一つの“伝説の会見” 父の法要後の囲みで…

[ 2015年8月16日 11:45 ]

父・杵屋勝東治さんの四十九日法要後に会見する勝新太郎さん

 14日から2日間に渡って紹介した「戦後70年 著名人が選ぶ“私のベスト10”」。芸能界の伝説の記者会見部門は、俳優の勝新太郎さん(97年に65歳で死去)が上位2つを独占した。90年1月の「もうパンツはかない」発言と、96年11月のがん公表中の喫煙。これに加えて芸能界で「勝新3大記者会見」と呼ばれる伝説の会見がもう1つある。同年4月7日、父で長唄三味線方の杵屋勝東治さん(享年86)の四十九日法要後の囲み会見だ。

 当時の取材ノートを久しぶりに開いてみた。法要という、本来なら笑いが起きないはずの場。それなのに、取材メモには「芸能リポーター大爆笑」と書かれてある。

 当日は、懲役2年6月の判決を受けたハワイでの薬物事件で、4年の執行猶予期間が満了する日でもあった。「今、何が一番したいですか?」の質問に、「まずハワイ行って…オレを捕まえた人たちを全部呼んでだね…まぁ、あれだね…一服吸ったりなんかして」と高笑いし、何かを吸引するポーズをとった。

 薬物吸引ポーズかと勘違いした女性リポーターは慌てて「やめてください」。これを逆手にとった勝さんは「タバコを吸うのに、なんで?」と聞き返し、このリポーターに向かって「(薬物を)吸ったこと、あるんだろ?だから知ってるんじゃない?」と突っ込んで周囲を爆笑させた。さらに去り際には、テレビカメラの前でのやりとりについて「うまく編集しておいて」と付け加え、最後まで笑いを誘った。

 会見前の納骨式にも驚いた。規制線から勝さんら遺族までの距離は100メートルほど。撮影カメラの望遠レンズをのぞくと、妻の中村玉緒が墓前で白い歯を見せながら苦笑し、「やめなさいよ」とばかりに勝さんの背中を叩いている。勝さんが突然、遺骨を食べ始めたのだ。この時、「これで父ちゃんはオレの中に入った」と心の中でつぶやいていたという。

 破天荒なイメージが強いが、家族への愛情も深い。82年、母の八重子さん(享年70)が亡くなった時には「“オレを産んでくれたところ”に顔を埋めてキスしたよ」と明かした。兄で俳優の若山富三郎さん(享年62)の四十九日法要(92年5月)では、囲み会見で「もう、オレの悪口を言ってくれる人は誰もいない…」とポツリ。さびしそうな表情を見せたことを今でも覚えている。

 一方で、執行猶予期間中の96年3月、スイス旅行に出かけて話題に。あのハワイ以来の渡航だけに、成田空港に張り込んで帰国を待った。すると、勝さん側から「成田空港のVIP室をおさえたので、そこで取材対応する」。机の上には瓶ビールが並び、勝さんは「今回は無事に帰ってこれた。さぁ飲んでくれ。飲まないと取材には応じない」と条件を付けた。1杯いただいて「今回はパンツをはいて行かなかったんですか?」と質問をすると、「もう1杯飲め!」とビール瓶の先を向けてきた。

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