「ゴーストライター」企画は騒動前、直球題名のワケ「自信あるので」

[ 2015年1月3日 09:30 ]

「ゴーストライター」のメーンビジュアル(左から水川あさみ、中谷美紀)

フジテレビ「ゴーストライター」小林宙プロデューサーに聞く(1)

 テレビ各局の年末年始特番モードが終わると、連続ドラマが始まる。1月クールも多彩なラインアップになったが、一際、異彩を放つのがフジテレビ「ゴーストライター」(13日スタート、火曜後9・00)だ。

 あの“騒動”が想起されるが、13年ぶりに連ドラ主演を務める中谷美紀(38)演じる天才小説家と水川あさみ(31)演じるゴーストライターを通して、対決や葛藤、友情や成長を描く。「僕の生きる道」やNHK連続テレビ小説「ファイト」などで知られる橋部敦子さんがオリジナル脚本を手掛ける本格ヒューマンサスペンス。制作の共同テレビ・小林宙プロデューサーは騒動の前から「仮面をつけて生きている現代人の深層心理を描きたかった」と企画意図を説明。「一時のブームに乗ったドラマじゃないと分かっていただける自信がある。最初は興味本位でもいいから、見ていただきたい」と呼び掛けた。

 作曲家を偽装した佐村河内守氏(51)と、その代作を務めたゴーストライターだったと公表した新垣隆氏(44)の“騒動”は2014年2月に新垣氏が会見して表沙汰に。しかし、小林プロデューサーにはもともと描きたいテーマがあった。

 「現代人が何か仮面をつけて生きているんじゃないか。本当の自分をさらけ出していなんじゃないか。現代人の深層心理や鬱屈した気持ちをちゃんと描けたらいい」と考えていたところで、ゴーストライター騒動が巻き起こった。

 「テーマをうまく描ける題材として」ゴーストライターを活用。「ゴーストライターする人と、される人がいるので、2人の対立で表に立つ人、裏に立つ人の気持ちを描けるんじゃないかと思いました」

 ドラマの設定は女性VS女性。「男性社会が色濃く残っているところがあると思うんですね。その中で、ヒロインが自分の力で“表”を勝ち取っていく。男性社会でありながら、女性が飛躍できる話の方が共感を得られると思いました」と女性同士の対決の構図にした。

 物語の舞台には出版社を選び、綿密な取材を行った。出版社は1人のベストセラー作家にかかる比重が大きく、その作家がいなくなるとビジネスとして成立しないため、ゴーストを生みやすい体質だという。

 書店は全国に1万5000店あるが、新人作家の初版は3000部といわれる。5店に1冊あるか、どうか。それに比べ、ベストセラー作家は初版数万部単位。店頭に平積みで並べられ、名前で書籍を手に取ってもらえる。ほとんどの本の赤字をベストセラー作家が回収。“高尚”な文学作品とはギャップのあるビジネスライクな出版業界もおもしろいと思ったという。

 タイトルは「ゴーストライター」と真っ向勝負。「ポスタービジュアル(中谷と水川)だけ見ても、よく分からないんですよ。ここに『ゴーストライター』という言葉が載ると、すごく分かりやすいじゃないですか。タイトルは分かりやすい方がいい、というだけです」。もちろん、他にも候補案はあったが「オシャレになり過ぎちゃって、分かりにくい感じがしたんですよね。初回を見ていただければ、2人の心理描写をまじめにしている、一時のブームに乗ったドラマじゃないと分かっていただける自信があるので、ド直球のタイトルに。最初は興味本位でもいいから、見ていただきたいなと思います」。騒動が連想されようと、ドラマの入り口を広げたかった意図を明かす。

 その自信の裏には、SMAPの草なぎ剛(40)が主演した「僕の生きる道」「僕と彼女と彼女の生きる道」「僕の歩く道」の“僕シリーズ3部作”などで知られる脚本家・橋部敦子さんの“新境地”があった。 

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