2015年注目の舞台は再演作品!2年ぶり「趣味の部屋」大事な財産に

[ 2015年1月3日 08:30 ]

2年ぶりに再演される舞台「趣味の部屋」のビジュアル

 2015年に上演される舞台で、注目の1つが「再演」だ。話題の再演作品が続々とラインアップされている。目の肥えた演劇ファンもうならせた密室サスペンスコメディー「趣味の部屋」(3月7日初日、東京・PARCO劇場)が2年ぶりに帰ってくる。同じ演目でも再演のたびに“進化”するのが舞台の魅力。パルコの尾形真由美プロデューサーは「よりおもしろい、精度の高い作品に。大事な財産にしていきたい」と意気込んでいる。

 「趣味の部屋」は「キサラギ」「リーガルハイ」などで知られる脚本家の古沢良太氏(41)が書き下ろし。「GO」「パレード」などのヒットメーカー・行定勲監督(46)が演出を務め、2013年3月に初演された。

 出演は中井貴一(53)戸次重幸(41)原幹恵(27)川平慈英(52)白井晃(57)の5人。創作料理、古書集めなど、男たちが「趣味」のために借りた一室。そこへやって来た1人の女性警官は最近、姿を現さない仲間の1人の行方を聞く。そして新たな事件の幕開け…。「男たちの楽園」は疑いと諍いの修羅場と化す――。笑いも満載の2時間ノンストップサスペンスは、大好評を博した。

 初演の大千秋楽は札幌公演。打ち上げの席で、キャストや演出の行定勲氏から「またやりたいね」「また会おうね」という声が上がっていた。尾形プロデューサーは「おもしろかったという記憶が残っているうちにやりたい」とオファー。稽古から地方公演までスケジュールを3カ月、押さえる必要があるが、多忙な5人の予定が「奇跡的に」(尾形プロデューサー)合い、再演が実現した。
 
 注目の15年版。尾形プロデューサーによると、古沢氏は「初演を観て、いろいろ思うところがあった。ちょっと書き直そうと思っている」という。尾形プロデューサーも「まるっと変わることはないと思いますが、いろいろなところでブラッシュアップされていくと思います」とし「もうちょっと登場人物1人ずつの背景が出てきて、人物像がより立体的になるといいと思いますが、それでスピード感が落ちても…」と悩みどころも明かした。

 もともとは、段田安則(57)との2人芝居「二人の噺」(01年、03年)や「コンフィダント・絆」(07年)「二人の約束」(08年)「グッドナイト スリイプタイト」(08年)「カーディガン」(10年)など、PARCO劇場と縁の深かった中井が、次はプロデューサーとして企画から立ち上げたいと生まれたのが「趣味の部屋」。中井自らが古沢氏に電話を掛け、直接口説き落とした。

 中井が目指す舞台は「お客さまが楽しんでくれて、楽しかったねと笑顔で帰ってくれるような作品」。そこにプラスアルファ、古沢氏には「海外に持っていけるような完成度の高い、ワンシチュエーションでオッと思えるミステリーを」と注文。古沢氏は中井の高いハードルを越えてみせた。

 実際、昨年11月15日からソウルで韓国版「趣味の部屋」が上演中(~1月18日)。2回、現地に足を運んだ尾形プロデューサーは観客の反応を肌で感じ「受け入れてもらっているみたいで、よかった」。中井の期待通り、世界への第一歩をしるした。

 尾形プロデューサーは舞台再演の意義の1つをこう語る。

 「最近思うんですけど、いい作品は大事にしたいなと。一生懸命作った作品を、もう一回やるというのも大事なんじゃないだろうかと。新しいものを作っていくのと同時に、いい作品をきちんと残していくことも大事。『趣味の部屋』もパルコ劇場の大事な財産にしていきたいです」

 再演を重ねる作品は傑作となり、後世に残る演劇界の財産に。今回は、その最初の一歩となる。

 ほかに注目される再演作品は、野田秀樹氏(59)が作・演出を手掛けるNODA・MAP「エッグ」(2月3日初日、東京芸術劇場プレイハウス)で2012年9月以来の再演。

 ユースケ・サンタマリア(43)らが出演するミュージカル「モンティ・パイソンのSPAMALOT featuring SPAM」(2月16日初日、東京・赤坂ACTシアター)は2012年1月以来の再演。井上ひさし氏の名作「藪原検校」(2月23日初日、東京・世田谷パブリックシアター)は野村萬斎(48)の主演で2012年6月以来の再演。上川隆也(49)主演「真田十勇士」(1月8日初日、東京・赤坂ACTシアター)は2013年8月以来の再演。

 次の再演はいつになるか分からない。今、この時こそ、名作を目に焼き付けたい。

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