吉田羊「HERO」は「一生の宝物」アドリブ鍛えられ“第2の転機”

[ 2014年8月25日 08:12 ]

クールな検事・馬場礼子を好演する吉田羊(C)フジテレビ

吉田羊インタビュー(上)

 女優の吉田羊(よう)がフジテレビ「HERO」(月曜後9・00)にレギュラー出演。SMAPの木村拓哉(41)が主演を務め、13年ぶりに復活した話題作に新メンバーとして加入し、一躍、脚光を浴びている。気が強く、冷徹な検事・馬場礼子役に自らのアイデアを注入。舞台出身の実力派が大きく羽ばたき「一生の宝物」と作品との出会いに感謝。アドリブを鍛えられ“第2の転機”を迎えたようだ。

 ――初回(7月14日)視聴率は26・5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。その後も好調です。街で声を掛けられるなど、周囲の反響はいかがですか?

 「圧倒的に“見ている”という方が多いです。友達の友達も見ているという話を聞きます。私の周りは視聴率100%です(笑)。ただ、礼子さんがカッチリとスーツを着ているのに対し、普段の私がナチュラル系のゆったりしたファッションをしていることが多いので、あまり気づかれないんですよね。髪も結んだり、帽子をかぶったり、メガネをかけたり。変装とかじゃなくて、こういう格好が普段から好きなんですよ」

 「(共演の)小日向(文世)さんは13年前の『HERO』に出て、そこから自分の俳優人生がスタートしたと言ってもいいくらい周りが変わった、と。『オンエアの次の日に渋谷のセンター街を歩いたら、初めて街で指をさされたんだよ。だから羊ちゃん、オンエアが始まったら大変だよ』と言われました。なので、ものすごく期待して、ものすごく緊張してセンター街を歩いてるんですけど、今のところ全くないですね(笑)」

 ――役作りをするにあたり、こだわったところはどこですか?

 「冷徹に被疑者を追い詰めるという役どころなので、あまり被疑者に対して情を移さないようにしています。被疑者のウソや動揺を見逃さないように、じっと相手を見つめる時間を長くして、まばたきを減らしてみたり。礼子さんのスイッチが入ると、自然とそうなるんですよね。ウソを見逃すまいと、まばたきする間も惜しいというか。それから、礼子さんって艶っぽいんですよね。髪をよくかき上げています。無意識なんですけどね。礼子さんのイメージで、それが癖なのかなって。普段の自分はしないので、礼子さんスイッチなのかな。衣装を着て、メークをした時点で、8割方(役に)入っちゃいます。特に普段と間逆な格好なので、ジャケットをはおった瞬間に背筋がピンと伸びますし、ヒールを履いた時点で歩き方も変わりますし。衣装に助けられている部分は多分にあると思います」

 ――監督との話し合いなどはありますか?

 「私は割とお任せされることが多くて。特にチーフの鈴木(雅之)監督からは『ここのシーンはたぶん吉田羊さんが何かやってくれるんですよ。“ん?”とか言っているけど、本番に入ったら、すごいから』という振られ方をします。そういうプレッシャーは怖いですけど、そのプレッシャーが楽しいという現場の雰囲気なので。そういう空気だからこそ役者が柔軟に自由に自分のアイデアを持ち込んだり、想像を膨らませたりできるんだなと思います。かといって本当に何でもOKということではなく、軸がブレずに現場で作り合っていける。それは『HERO』ならではだと思います」

 アドリブも試される。台本に書かれているセリフは基本的に変えない。台本上のセリフが終わっても、カットがかからない時がある。台本上のセリフが終わり、そこから監督のカットの声がかかるまでが「HERO」流のアドリブ。例えば、第1話。時効が迫る事件が礼子に回ってきた。井戸事務官(正名僕蔵)が「きょうは初めての結婚記念日なんです。今夜は妻とお祝いしようって…」と、先に帰りたいと訴える。礼子は「じゃあ、1人身の私が(資料を)全部読めばいいのね。1人で。まあ、いいか。どうせ帰っても1人だし。ここで1人で読んだって、誰も心配しないしね」と言う。

 「例によってカットがかからなかったので、礼子さんとして、その後、しゃべり続けたんです。尺の問題で、オンエアには使われなかったんですけど。『まあ、このまま帰っても、コンビニ寄って、お弁当買って。もういなくなった猫のエサを買って。帰って猫にエサをやるフリをして…』みたいなことを、礼子さんが家に帰ったらこういうことをしているだろうと一瞬で想像しながら、しゃべり続けました。監督は『こいつはどこまでしゃべり続けるんだろう』とフフッと笑っていましたけど。今回の『HERO』で、アドリブ力は鍛えられたと思います」

 ――吉田さんの女優人生において「HERO」はどのようなものになりそうですか?

 「これだけアドリブを求められるお芝居は、これまでそんなにやってこなかったですし、私にとってはすごく挑戦的な作品になりました。芸達者な皆さんと共演させていただいて、学ぶところも大きかったので、俳優として確実に1つ、成長できたかなという思いはあります。今までやった作品も全部楽しかったんですけど『HERO』が一番楽しいんですよね。スバ抜けて幸せなんです。出演者が全員幸せと口を揃え、スタッフの皆さんも本当にニコニコと笑顔でいらっしゃって、他の現場では疲れてくると一瞬険悪になったりするんですけど(笑)、それも一切なく。世間的にもみんながこれだけ月曜日を楽しみにし、作品を愛して。これだけ揃ったドラマって、ほかにないと思うんです。それに関われたというのは本当に幸せですし、私にとっての一生の宝物ですね」

 ――2008年、中井貴一さん(52)に見いだされたのが大きな転機になりました。今回はいかがでしょうか?

 「自分が関われてよかったという作品をやればやるほど『もうこれでいいや』と思ったら終わってしまう。たぶん今回の『HERO』で私を知ってくださった方もたくさんいて。これからは、その方たちに期待されていくわけですよね。そういう意味でも、また1つ、尻を叩かれる作品になったと思います。そういう意味では、今回も転機かもしれないですね。自分が一生懸命やった確信があれば、どの作品だって転機だと思いますけど、今回は特に、多くの人が注目しているドラマで1つ、私の居場所を作れたというのは大きな意味があったなと思います」

 ◆吉田 羊(よしだ・よう)2月3日、福岡県生まれ。2001年、劇団「東京スウィカ」を旗揚げ。07年、フジテレビ「愛の迷宮」でドラマデビュー。その後、11年のNHK大河ドラマ「江」12年度のNHK連続テレビ小説「純と愛」などに出演した。映画は出演作「魔女の宅急便」「六月燈の三姉妹」「幕末高校生」が今年公開。舞台は三谷幸喜氏作・演出「returns」(09年)「国民の映画」(11年初演、今年再演)などに出演した。現在、NHK Eテレ「SWITCHインタビュー達人達」(土曜後10・00)のナレーションを担当。趣味はアンティーク着物、スキューバダイビング。特技はピアノ。

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