「シティーハンター」“タッグ”でバーチャル歌姫

[ 2012年5月27日 06:00 ]

シティハンターに登場するミニの前で握手する北条司氏(左)と小室哲哉

 インターネットなど仮想空間を中心に活躍する架空の歌手(バーチャル歌手)が音楽シーンを盛り上げている。人間の声を基にした音声合成ソフトで歌うキャラクター「初音ミク」ら関連商品の市場が100億円を超え活気づく中、漫画「シティーハンター」の作者北条司氏(53)がデザイン、小室哲哉(53)プロデュースによる新たな歌姫が誕生した。

 プロジェクトは「シティーハンター」のアニメ版放送開始から25周年記念の一環。放送当初のエンディング曲だった「GET WILD」を新たにカバーする案が浮上した際に、小室が「普通のカバーはしたくない」と試行錯誤し、バーチャル歌手に行き着いた。「誰よりも美しい女性を描く」と北条氏に新たなキャラクターの作画を依頼した。

 名付け親は北条氏。ポリネシア語で「オセアニアの伝承であらゆるものに宿るエネルギーのような概念」「実体ではない心みたいなイメージ」という意味を込めてManaと命名した。

 小室は北条氏から届いたラフスケッチを一目見て「彼女のパーソナリティーがすぐに見えてきた。ちょっと陰があったり。後ろ姿を見て特に何かを背負っているように感じた」と創作意欲をかき立てられたという。

 15日からMana名義による「GET WILD」をYouTubeに公開。小室は「両親の影響で原曲を幼い頃から聴き、それを知らず知らず口ずさんでいる」という設定で作ったが、「“凄く格好いいトラックにしてくれてありがとうございます。気持ちよく歌えました”とはまだ言ってもらってない」と現状に満足していない。

 今後は「シティーハンター」関連とは別に、オリジナル曲「SUPERNATURAL」と、フルCGで作ったミュージックビデオを公開する予定。さらに「まだ心の奥底を全然描き切れていない」と、アルバム単位などで彼女の背景を表現しようと構想を練っている。

 小室は約10年前にアニメや漫画など日本のサブカルチャーが海外に浸透している点に着目。インターネットを通じてリアルタイムで発信もできるため「音楽の部分でも通用する可能性が高い」と感じていた。

 近年バーチャル歌手市場が成長していることも追い風になった。音声合成ソフト「初音ミク」の大ヒットを機に関連商品を含めた市場は100億円を超える規模とされる。昨年は初音が米ロサンゼルスでライブを開催。それ以外でもAKB48の主要メンバーの顔をCG合成した「江口愛実」が突如CMに出演したことも話題になった。

 バーチャル歌手に詳しい音楽関係者は「技術が日に日に進歩している。実在する歌手と同じような感覚で応援する人が増えてきた」と説明する。

 より生身の人間に近づけようと、Manaにはオリジナルの声を吹き込むことも検討されている。これまで数多くのアーティストを見てきた小室は「骨格、首の太さや長さなどで声質が分かる」といい、技術的な問題がクリアされれば体格(1メートル70前後)に合わせた声を作りたいという。

 「いろんな可能性を想像させるキャラクターは世界中でまだいない。その“第一人者”になってほしい」(小室)、「育てていただければ。僕は生むだけですから」(北条氏)。“マナ娘”を語る2人の表情は大きな期待感に満ちていた。

 ▽バーチャル歌手 初音ミクに代表される音声合成ソフトとそのイメージキャラクターで構成されているものが主流。ボーカロイドとも呼ばれている。ファンが動画サイトに投稿した関連楽曲は、CDやカラオケでランキング上位になるなど人気に。

続きを表示

2012年5月27日のニュース