由紀&安田姉妹 原発避難者100人と涙の「故郷」

[ 2011年7月13日 06:00 ]

「手のひらを太陽に」を振り付けで披露した由紀さおり(左)と安田祥子

 歌手の由紀さおり(62)が12日、東日本大震災の避難所となっている福島県福島市のあづま総合体育館を訪れ、姉の安田祥子(69)と慰問コンサートを行った。初めての避難所訪問で約150人を前に「故郷」など童謡を中心に計26曲を披露。「明確に支援していく意味を持てた」と話し、8月1日のチャリティー公演「あしたへ」(毎日新聞社主催)に向けて誓いを新たにした。

 福島第1原発事故で避難を余儀なくされた約490人が暮らすあづま総合体育館。原発から半径20キロ圏内の警戒区域に設定された南相馬市小高区の住人らが共同生活を送る避難所に「故郷」が響きわたった。

 福島県は姉妹にとってもゆかりがある。長兄の夫人である義理の姉が南相馬市出身ということに加えて、毎年のようにコンサートで訪れているため思い入れは強い。「つらい時間を少しでも忘れられれば」と約150人の避難者にマイクを向けながら一緒に合唱。♪志を果たして いつの日にか帰らん 山はあおき故郷 水は清き故郷――。帰りたくても帰れない故郷を思い涙する人もいた。

 しんみりした後は笑顔のステージ。「赤とんぼ」「大きな古時計」など予定していた9曲以外は客席からのリクエストで進行。「シャボン玉」「七つの子」「蛍の光」「仰げば尊し」…。次々と要望に応え、アカペラやCDの伴奏に合わせて17曲を披露。幼い頃に聴いた童謡を懐かしむように客席には自然と優しい笑みが広がった。

 その後、福島県猪苗代町のホテル「リステル猪苗代」を慰問。原発から半径10キロ圏内の双葉町や同20キロ圏内の浪江町の住民らが避難している会場に歌声を届けた。

 由紀は「家に戻れないかもしれない、先が見えないといういら立ちをほんの一瞬でも忘れてもらえれば。心の栄養にしてほしかった」と振り返った。安田も「硬かった皆さんの表情がどんどん明るくなっていった」と歌の持つ力を口にした。

 2人は前日11日に津波で被災した宮城県山元町を訪問。被災地、避難所両方の現状を目の当たりにした。由紀は「見て聞いて感じたことをほかの人に伝えていく役割があると思う」と8月1日に行う自身のチャリティー公演に向けて決意を新たにした。同公演の収益の一部と会場で集めた募金は震災遺児支援の「毎日希望奨学金」に寄付される。

 ≪南相馬市から避難の村松さん「かあさんの歌」をリクエスト≫3月17日に南相馬市小高区から家族で避難してきた村松トキ子さん(53)は「かあさんの歌」をリクエスト。「南相馬市内に寝たきりの母を残している。姉が看病しているのですが、母のことを思い出すとどうしても聴きたかった」と感慨深げ。同15日から避難所生活を送る同鹿島区の桜井泰夫さん(64)は「懐かしかったね。精神的な負担も多いから助かる」と笑顔で2人のサインをもらっていた。

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2011年7月13日のニュース