押尾被告301日ぶり保釈「彼女の墓参りしたい」

[ 2010年10月5日 06:00 ]

保釈され東京拘置所を後にする押尾学被告。後ろは松本弁護士

 保護責任者遺棄など4つの罪で懲役2年6月の実刑判決を受け、控訴した元俳優押尾学被告(32)が4日、保釈された。昨年12月7日に逮捕されてから301日ぶりで、保釈保証金は1000万円。東京拘置所を出た押尾被告は報道陣に向かって深々と一礼し、無言のままタクシーに乗り込んだ。弁護士によると、一緒に合成麻薬をのんで死亡した女性の遺族に会いたい意向を示した。

 押尾被告は午後7時36分、約10人の拘置所職員に囲まれながら姿を見せた。黒いジャケットにワイシャツ、ジーンズ姿。法廷で必ず締めていたネクタイは着けていなかった。
 みけんにしわを寄せ、うつむいたまま数歩歩くと、報道カメラに向かって足をそろえて立ち止まり、手を太腿の横に置いて深々と一礼。報道陣が「何かひと言」「控訴審への意気込みを」と矢継ぎ早に声を掛けても何も答えず、待機していたタクシーの後部座席に弁護士と乗り込んだ。
 別のタクシーには、拘置所から運び出された段ボール5箱分の荷物が積み込まれた。
 真っ先に向かったのは東京都新宿区の弁護士事務所。午後9時半、出迎えた男性ファンに「頑張ってください」と励まされ「ありがとう」と握手。その後は都心のホテルで過ごしたとみられる。
 これに先立ち、東京高裁(岡田雄一裁判長)は被告側の保釈請求を却下した東京地裁決定を取り消し、保釈を認めた。保釈保証金は弁護団などが工面して納付。保釈中の制限事項には、検察側証人をはじめ、事件関係者の一部との面会禁止などが盛り込まれた。
 1月に保護責任者遺棄致死などの罪で追起訴された後は、地裁に9回にわたって保釈を請求。いずれも却下され、9月29日付の高裁への抗告で初めて認められた。検察側は高裁決定に対する特別抗告をしなかった。
 松本隆弁護士によると押尾被告は拘置所の中で保釈決定を伝え聞くと「よかった。とにかくよかった」と笑みを浮かべて喜んだ。また判決後、法律の本を読みあさっているせいか、「日本は保釈が厳しすぎる。司法の米国化を目指すなら、保釈についても見習うべきだ」と訴えた。事件で死亡した飲食店従業員、田中香織さん=当時(30)=については「できることなら彼女の両親に会って事情を説明したい。許されるなら墓参りをしたい」と話したという。
 弁護団によると、押尾被告は1審判決後、検察側が控訴を見送ったことについて「検察の敗北だ」と語った。髪の毛は昨年12月に逮捕されて以来、伸ばしたままで、野嶋慎一郎弁護士は「体の中にロック魂があるため髪を切らないのでは」と説明している。

続きを表示

2010年10月5日のニュース