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[ 2009年12月6日 06:00 ]

ミンコフスキは6曲ものアンコールを行い、聴衆を喜ばせた

 交響曲第103番は「太鼓連打」という副題のとおり、冒頭のティンパニのソロが有名です。玩具のような響きのするティンパニの音に、懐かしさを感じました。私は不謹慎にも、ブレーメンの音楽隊や子供たちの鼓笛隊を連想してしまいました。ティンパニの男性が小柄でキュートだったことにも影響されたのかもしれません。しかし、コンシェルジェの解説で、私が親しみを感じた響きは、マレットと呼ばれる先にフェルトの付いたバチではなく、木のみで出来たバチ使っていたためで、これが原因で現代オーケストラのティンパニのサウンドよりも弾けるような音がするのだと判明しました。また、バロック・ティンパニは現代のティンパニに比べると口径も小さくその分、軽やかな響きがするそうです。

 世界最高のバロック・オーケストラの1つとされるルーヴル宮音楽隊ですが、実際、彼らのアンサンブルは、狂いのない時計のごとく、実に正確でした。目を閉じるとそれぞれの楽器があたかも1人で演奏しているのではないかと思えるほどなのです。丁寧に時間をかけて行われるチューニングからは、素晴らしい演奏をするために労を惜しまない彼らの精神が垣間見えるようでした。
 英国・ロンドンのバッキンガム宮殿の衛兵マーチ、パリ・ルーヴル宮近くの広場、さまざまな場所にミンコフスキ率いるルーヴル宮音楽隊が現れて演奏すると、人々が集まってくる。私には、彼らの進む後には、温かい光に包まれた道ができているというような情景が見えてきました。いつしか、ピリオド奏法の魅力を分析することを忘れて、縦横無尽に空想の旅をし、ハイドンの音遊びを楽しんでいたのです。「楽しい!」そう思った時、はっとさせられました。オンガクのガクは「学」ではなく、「楽」と書く。音楽を理解しなくてはならないと、いつから眉間にシワを寄せて演奏会を聴くようになったのでしょうか。

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2009年12月6日のニュース