森脇浩司氏 沖学園SDで福岡の高校野球界盛り上げる 「師匠」故・根本陸夫さんから現役時代に受けた言葉

[ 2023年6月14日 05:00 ]

身振り手振りで指導にあたる森脇シニアディレクター
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 今年も熱い夏がやって来る。第105回全国選手権大会(8月6日開幕、甲子園)の福岡大会は来月1日に開幕する。100回大会だった2018年以来の出場を目指す沖学園はオリックスの監督やソフトバンクのコーチなどを務めた森脇浩司氏(62)が今春、シニアディレクター(SD)に就任。プロ野球監督経験者が、高校生と向き合いながら、福岡の高校野球界を盛り上げる。

 新たな世界に飛び込んだ森脇SDの表情は充実感に満ちている。福岡市博多区にある沖学園のグラウンド。ネット越しに打撃練習を見つめ、身ぶり手ぶりも交えながら指導にあたる。「彼らの放つ日々の変化はすさまじいです」と高校生の吸収力に驚いている。

 現役時代はダイエーなど3球団でプレー。引退後は球団に残ってコーチを担い、王貞治球団会長からノックの腕前を評価された。オリックスの監督などを経て2年間務めたロッテのコーチを昨年限りで退団し、沖学園からのオファーを受けて学校の職員となった。福岡工大の特別コーチ(19~20年)以来、自身2度目のアマチュア野球の指導にあたる。

 「師匠」と慕い“球界の寝業師”の異名を取った故・根本陸夫さんから現役時代に受けた「アマチュアから学ぶんだ」という言葉が胸にある。未完成の選手たちの動きを観察することで学べること、気づくことがたくさんあるという教えだ。

 また、プロ経験者はアマチュア野球の世界で指導者になった際、“正しいことを言う”という前提で見られがちだ。「正しくないことを伝えるほど罪なことはないと思う。本当に繊細にやっていかないといけない」と上からではなく、対等な声かけで押しつけないことを心がけている。

 練習は夜遅くまで見つめ、ノックの後ろに入って守備の動きや走塁を見つめて助言を送ることもある。遠征先の熊本にも駆けつけ試合をネット裏から見つめた。主将の照屋天琉(ありゅう)外野手(3年)は「自分たちが今まで気づいていなかった欠点というか、打撃フォームや守備の連係だったり、新鮮な方向で刺激をいただいている」と感謝する。

 森脇SDも選手との距離感が少しずつ縮まっていると感じており、質問してくる部員や回数が増えてきたと明かす。この変化を喜びつつ、「もっといいのは、自分で考えて解決するところまでいけばいい。崩れたときに一人で立ち上がれる選手や人間の形成が最終目的」と目指す形を語る。「後々にでもこの人と出会えて良かったと思ってもらえるように」と森脇SD。鬼塚佳幸監督やスタッフ陣とも力を合わせながら、向き合っていく。(杉浦 友樹)

 ○…森脇SDは選手にメモのススメを説く。自身の高1時に担任の勧めで始めて、62歳になった現在も継続中だという。対戦相手の情報や今日学んだことなどを書き込む。「書くことの大切さをね。書くことで記憶しやすいというのもある」と意義を語った。

 ◇森脇 浩司(もりわき・ひろし)1960年(昭35)8月6日生まれ、兵庫県出身の62歳。社から78年ドラフト2位で近鉄に入団。84年オフにトレードで広島、87年途中に南海にトレード移籍。96年限りで現役引退。現役通算843試合に出場し、打率・223、14本塁打、75打点。引退後はソフトバンク、巨人、オリックス、中日、福岡工大、ロッテでコーチ。13年から15年途中までオリックスの監督。右投げ右打ち。

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