鈴木啓示氏　「1球に泣く」がないオリックス・山本由伸　これぞ勝てる投手

交流戦   オリックス2―0阪神 （ 2023年6月13日    甲子園 ）

鈴木啓示氏
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　【鈴木啓示　視点】日本を代表するオリックス・山本が持てる能力、技術をフルに発揮して阪神打線を封じた。これが通算60勝目。1球ごとに左足の上げ方、そして着地のリズムを変えて、相手にタイミングを合わさせない投球を実に細やかに展開した。絶対に点は与えないという気持ちが伝わる投球だった。

　カウントが3ボール0ストライクとなる場面が3回あるなど、ボールが続くケースは多かった。球威も含めて本調子ではなかったと思う。それでも7回2死満塁での木浪の打席など、要所ではコースを間違えず、甘い球はなかった。1球に泣くということがない。これが勝てる投手になっている理由だ。

　甲子園では初先発だったという。交流戦がなかった私の現役時代を思い出した。「オープン戦でもいいから甲子園で勝ちたい」という思いは持っていた。なのに阪神相手に失点を許し、西本幸雄監督に怒られた経験がある。今も昔も甲子園という場所は相手にとっても特別な球場。おそらく山本も、この勝利は格別だったはずだ。

　投げ合った阪神・村上も、この経験を投手人生の財産にしてほしい。山本に“ロースコアの試合になる”とプレッシャーをかけたのも、今季のこれまでの内容を知らしめたからこそ。一方で7回の被弾は甘く入っていた。好不調の波を最小限に抑える投球術、勝負どころでのコントロールなど、山本から学べるところは多かった。これをただの1敗に終わらせてはいけない。（本紙評論家）