大谷と渡辺雄太の絆　同じ94年生まれアスリートの知られざる交流　20日試合前には互いのユニで会場入り

大谷のユニホームを着用してバークレイズ・センターに入る渡辺（ネッツ提供）
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　エンゼルスの大谷翔平投手（28）は投手で3勝、防御率0.64、打者で6本塁打とメジャー6年目も投打で存在感を示している。今年最初の「Monthly　Shohei」4月編は、同じ94年生まれで親交のあるネッツの渡辺雄太（28）との友情物語に迫る。20日の試合前に共に互いのユニホームを着用して球場（会場）入り。2人の知られざるやりとりが明かされた。（取材構成・杉浦大介通信員、柳原　直之）

　同じニューヨークを舞台として戦う、94年生まれの絆だった。4月20日のNBAプレーオフ東カンファレンス1回戦。76ersとの第3戦を控え本拠地バークレイズ・センターに入る渡辺はどこか誇らしそうだった。漢字で「大谷翔平」とプリントされたエンゼルスの背番号17のユニホームを着用。ネッツが公式SNSに動画と写真をアップし、日米で大きく話題を集めた。

　実は同じタイミング、同会場から約17キロ離れたヤンキースタジアムでは、大谷がネッツの背番号18、渡辺の黒いユニホームを着用して球場入りしていた。試合後はロッカーに掛けていたユニホームを人知れず丁寧に畳み、球場を後にした。

　互いのユニホームで球場（会場）入りしよう――。大谷のニューヨーク遠征と本拠地でのプレーオフが重なり、数日前にネッツ側が発案したという。提案を受けた渡辺は「向こう（大谷）がOKなら僕もOKだ」と承諾。大谷のスマートフォンにテキストメッセージを送信した。「俺も言われた。プレーオフ頑張って」と返信があり、実現に至った。

　出会いは19年6月7日。同じ94年生まれの競泳・瀬戸大也の紹介で連絡を取り合うようになり、エンゼルスタジアムでのマリナーズ戦前に初対面を果たした。当時グリズリーズの渡辺は打撃練習を見学後、大谷が用意したチケットで「大谷顔だらけTシャツ」を着用して観戦。その後、定期的にテキストメッセージのやりとりを続けてきた。昨年11月下旬に渡辺が右太腿裏を肉離れした際には、大谷から「大丈夫ですか？」と心配するメッセージが届いた。

　渡辺が最も感銘を受けたのは、二刀流を貫き、規格外の結果で批判やネガティブな意見を180度、変えてしまったことだという。「今ではMLBの顔。もちろん自分はNBAの顔になれるとは思っていないけど、自分の信念を貫くことは大事なんだなというのは彼を見て感じる」と大いに刺激を受けている。

　ネッツは4連敗でプレーオフ敗退が決まり、渡辺のNBA5年目は終了。一方、大谷のメジャー6年目は始まったばかりだが、2人はそろってこのオフにFAとなる。既に大谷の去就報道は過熱しており、ニューヨークでのヤンキース戦では地元メディアが熱狂していた。「ちょっと噂ありますよね。僕がニューヨークに残るのが分かっていたら、もし彼がニューヨークに来たら最高ですけど。僕もFAになるので、どうなるか分からないですから」と大谷の行方が気になる様子だった。

　1メートル93の大谷と、2メートル6の渡辺。2人の爽やかな笑顔が似ていると話題にもなっている。競技は違えど、ともに世界最高峰の舞台で戦う同い年のアスリート同士。心はどこかでつながっている。

　▽大谷と渡辺の初対面　19年6月7日にエンゼルスタジアムで行われたエンゼルス―マリナーズ戦前に初対面。渡辺は打撃練習から見学し「打球の伸びというか、見ていてその辺はやっぱり違う」と驚愕（きょうがく）。「同い年でこんな凄い世界で活躍している彼の姿を毎日見ていると、自分ももっと頑張らないと」と語り、2人で談笑する場面もあった。

　▽大谷世代のアスリート　94年度生まれの大リーガーではカブス・鈴木誠也、アスレチックス・藤浪晋太郎がおり、プロ野球ではDeNA・佐野恵太、阪神・近本光司、大山悠輔、中日・柳裕也ら。他競技ではフィギュアスケート・羽生結弦を筆頭に、サッカー・浅野拓磨、南野拓実、競泳・瀬戸大也、萩野公介、スピードスケート・高木美帆、バドミントン・桃田賢斗、奥原希望、レスリング・土性沙羅、金城（旧姓川井）梨紗子、柔道・ベイカー茉秋ら逸材ぞろいの「最強世代」とも呼ばれる。

　◇渡辺　雄太（わたなべ・ゆうた）1994年（平6）10月13日生まれ、香川県出身の28歳。香川・尽誠学園時代に全国高校選抜優勝大会で11年から2年連続準優勝。米ジョージ・ワシントン大を経て18年にグリズリーズと契約し、日本人2人目のNBA公式戦出場を果たす。21年には東京五輪でバスケットボール男子日本代表の主将を務めた。2メートル6、97キロ。ポジションはスモールフォワード。