元NPB審判記者がフル装備でブレーク期待のソフトバンク・風間をジャッジ!

[ 2023年1月12日 05:30 ]

風間(左)と元NPB審判員の柳内記者(撮影・西川祐介)
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 年が明け球界はプロアマともに、23年シーズンへ動き出している。スポニチでは新企画の「突撃!スポニチアンパイア」がスタート。11年から16年までNPB審判員を務めた柳内遼平記者(32)が、フル装備で選手たちの成長や、魅力をジャッジする。第1回は21年のソフトバンクドラフト1位の風間球打(きゅうた)投手(19)。今季のブレークに期待がかかる高卒2年目右腕の凄みを、マスク越しにチェックした。 【動画】実際のジャッジの様子はこちら

 年始に山梨でオフを過ごす風間の元に、いざ「突撃」。「スポニチアンパイア」の記念すべき第1回は、アマチュア担当記者としてノースアジア大明桜(秋田)時代に追いかけた最速157キロの剛腕を選択した。審判員用マスク、プロテクター、レガースをキャリーバッグに詰め込んで、東京から特急に飛び乗った。

 風間の父・啓介さん(53)の地元である山梨市の小原スポーツ広場。グラウンドに足を踏み入れると、準備体操をしていた右腕は「チワッ!」とあいさつ。捕手役を務めてくれた兄の球星(22)と入念にキャッチボールが進んだ。こちらもフル装備で準備万端。いざ。右手で風間を指さし、NPB審判員だった16年以来7年ぶりに「プレーボール!」の声を張り上げた。

 ゆったりとしたフォームから放たれた直球が、一瞬でミットにズバンッ。もちろん球速は抑えているが、衝撃の軌道に「ス、ストラーイク!」とジャッジが遅れた。情けない。審判員の中でダメな例に挙がる「刺された」状況。想像以上のボールが来た時、瞬時にジャッジできずにコールが遅れることだ。

 風間が「この真っすぐがあるからこそ打たれない」と自信を持つ直球。まるで急降下するジェットコースター。「前に見たことがある…」と、ある投手が浮かんだ。審判員時代に球審を務めたことがあった元阪神のメッセンジャーだ。通算98勝の1メートル98の右腕。直球が「2階から落ちてくる」と表現するほどの角度を生かし、勝ち星を重ねた。風間は身長では14センチ低い1メートル84だが、長い腕で真上から振り下ろすため角度が出る。これが武器だ。

 10球続いた直球に目が慣れてきたところで、決め球のフォークがきた。ストンと落ちるのではなく、不規則に揺れながら落ちる。何度も球審を担当したソフトバンク・千賀は落差が大きく真っすぐに落ちる正統派。落差は千賀にかなわないが、ナックルやチェンジアップに近く、軌道の予測がより困難で「リリースによっては違う変化になる」と風間。千賀は「お化けフォーク」の異名を取ったが、変化が予測しにくいフォークには新たな「お化け」の予感がある。

 事実、11月中旬から参加したオーストラリアでのウインターリーグでブレークを予感させた。全4試合に先発し0勝1敗、防御率4・40も、14回1/3で20奪三振。150キロを連発し「真っすぐを待たれても空振りを取れた」と外国人打者相手に自信を深めた一方、課題はまだある。圧倒的球種で空振り、三振は増えるが球数がかさむ傾向がある。高3夏の甲子園では明徳義塾戦で6回で139球を要して降板した。プロで戦うためには芯を外して打ち取る球種の習得や、球数を減らして1年間投げ抜く技術も必要。まだ高卒2年目で、さらなるフィジカル面の強化は必須だ。

 千賀が抜ける今季に向けて「エースが抜けたということで自分もローテに入りたいという気持ちが大きくなった」と躍動を誓った。ネット越しの観戦と「ジャッジ」では違う。間近で見ることができた生きたボール。今季、風間が1軍で本物のアンパイアにジャッジされるのが楽しみだ。(柳内 遼平)

 ◇風間 球打(かざま・きゅうた)2003年(平15)10月11日生まれ、山梨県甲州市出身の19歳。小1から野球を始め、塩山中では笛吹ボーイズでプレー。ノースアジア大明桜(秋田)では1年春からベンチ入り。3年夏には甲子園に初出場し、2回戦で明徳義塾(高知)に敗れるも152キロを計測。愛称は「Qちゃん」。名前に全員「球」が入る4兄弟の三男。1メートル84、83キロ。右投げ左打ち。

 ◇柳内 遼平(やなぎうち・りょうへい)1990年(平2)9月20日生まれ、福岡県福津市出身の32歳。光陵(福岡)では外野手としてプレー。四国IL審判員を経て11~16年にNPB審判員を務める。2軍戦では毎年100試合以上に出場し、1軍初出場は15年9月28日のオリックス―楽天戦(京セラドーム)。16年限りで退職し、公務員を経て20年にスポニチ入社。同年途中からアマチュア野球担当。

 ≪兄・球星は独立LからNPB入り誓う≫小学生時代以来の「兄弟バッテリー」に兄・球星は「小学生の頃と比べて角度、切れ、スピードまで別人のようなボールでした」と成長を感じていた。自身は甲府工時代は主に捕手で、昨秋まで東京新大学リーグの駿河台大で外野手として活躍。今年設立された独立リーグのベイサイドリーグ・千葉に入団する。50メートル走6秒0、遠投100メートル。「弟と同じ舞台で野球をしたい。独立リーグで活躍してNPBに行きたい。活躍できる場であればどのポジションでも頑張りたい」と意気込む。

 ≪因縁の球団…取材NGと思いきや≫企画取材は球団から「お断り」される可能性が高いと予想していた。審判員時代、ソフトバンクとの相性が最悪だったからだ。12年にカブレラを「侮辱行為」で退場にした。16年には藤本博史2軍打撃コーチ(現監督)を「暴言」で退場。決して印象の良い審判員ではなかったはずだが、球団から「OK」が出た。ありがたかった。久しぶりの感覚だった。審判員時代、球審の前夜は胸が高鳴り寝付けなかったが、今回も前夜は目がさえ、一睡もできなかった。風間が「優しいストライクゾーンでした」と笑ってくれ、久々の緊張がようやく解けた。(アマチュア野球担当 柳内 遼平)

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