伊東勤氏 オリックス・由伸を苦しめた不慣れな神宮 ヤクルトの打線の怖さと光った中村の強気リード

[ 2022年10月23日 05:30 ]

SMBC日本シリーズ2022第1戦   ヤクルト5ー3オリックス ( 2022年10月22日    神宮 )

<ヤ・オ>初回、村上に四球をを与えるオリックス先発・山本(撮影・沢田 明徳)
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 【伊東勤 日本シリーズ大分析】日本シリーズの行方を左右する第1戦はヤクルトが先勝し、オリックスは2発を浴びたエース・山本の不調が誤算となった。本紙評論家の伊東勤氏(60)は、不慣れな神宮球場のマウンドが影響したと指摘。緊急降板の要因となった左脇腹違和感の状態次第だが、早期回復なら次回登板は本拠・京セラドームとなる27日の第5戦に中4日で投げることを提唱した。(構成・浅古 正則)

 山本は慣れないマウンドで自分の投球ができなかった。立ち上がりの初球、塩見に甘い直球をカツーンと打たれて「おやっ?」と思ったはずだ。いつもなら低めに決まるはずがスッと浮いて真ん中に入った。2死一、二塁。オスナの初球、外角のフォークと2球目の直球がベルト付近に浮いた。3球目、カーブがど真ん中に入って三塁線を破られる先制二塁打となった。

 3回、塩見に内角にシュート回転で入る甘い直球を左中間に運ばれ、4回にはオスナに高めに浮いたカットボールを左中間に運ばれた。山本のフォークは少し曲がりながら落ちるものと縦に落ちるものがある。いつもはこれを低めに投げ分けている。だがこの日は投げ分けるというよりも低めのコントロールできるフォークを懸命に探っているように見えた。フォームも下半身がうまく使えず上体に力が入りすぎていた。

 神宮球場は水はけの関係から打席付近が少し高くなっていて投球が浮いてしまう傾向がある。私も現役時代の日本シリーズで痛い目に遭った。ヤクルトと初めて対戦した92年の日本シリーズ。神宮の初戦で古田と杉浦さんに一発を浴び、第6戦では秦のサヨナラ弾を含む4発を食らった。当時の西武投手陣は制球はいい方だったが、浮いてしまう球をなかなか修正できなかった。

 山本は敵地のマウンドでもがきながら途中降板。左脇腹に異変があったのも、制球しようとフォームを調整したのが影響したのかもしれない。オリックスにとって山本で落とした1敗は痛い。もし左脇腹が軽傷であるならば中4日で第5戦に行ってほしい。第6戦では再び神宮での登板になる。本来の山本を取り戻すためにも第5戦先発を期待したい。

 8回の一発は、さすが村上という当たりだった。カウント3―2からのフォーク。平野佳にすれば、四球を出したくないからストライクゾーンで勝負せざるを得ない。その甘い球を逃さず、スタンドまで運んでいった。シーズン終盤、56号を打つためにもがき苦しんだが、待望の一発が出て本来の村上に戻った。6回の右飛も、ホームランになる「角度」は出ていた。

 初回のオスナの適時二塁打は、村上の打席抜きには語れない一打だ。2死二塁から、山本は村上との勝負を避けた。結果的に4球連続ボールで四球だったのだが、2球目、3球目にカーブを投げている。中日コーチを務めていた昨年、オスナと対戦しているが、観察眼がとても鋭いと感じていた。前の打者への配球を食い入るように見ている。

 オスナは村上の打席で山本のカーブの軌道もインプット。自分へも投げてくると確信していたはずだ。そこに甘いカーブが来た。強振するのではなくコンパクトに振り抜いてタイムリーにつなげた。オリックスバッテリーはこれで村上だけでなく、オスナへのマークも徹底しなければならなくなった。

 中村の強気なリードがオリックスの反撃を食い止めた。中村という捕手は打線の一回り目は直球、二回り目以降は変化球を軸にする傾向がある。この試合でも立ち上がりは直球で押した。小川が不安定でプラン通りには運ばなかったようだが、5回を乗り切った。

 6回以降は救援陣を思うように操る。圧巻は田口登板時の7回杉本の打席だ。スライダーとチェンジアップの構成で3―2。最後は内角への145キロ直球で見逃し三振に仕留めた。中村は外を中心に変化球を散らしてズバッと直球で仕留めるリードが好きだし真骨頂。オリックス打線は中村にいいようにされた。抑えのマクガフが投げた9回1死一、二塁でも杉本を変化球2球で追い込み、1―2から最後は高めの直球で空振り三振を奪った。

 あえて注文をつけるとすれば、吉田正をもっと攻めてほしかった。結果的に杉本を封じて勝っているのだが、吉田正にヤクルト投手陣の攻撃的なイメージを植え付けられなかったのは残念。2戦目以降を注目している。

 《由伸 苦しんだ直球の制球》山本はレギュラーシーズンで2909球を投げ、球種別の直球の比率は最も高く42.5%だった。しかし、この日は64球中、わずか23球と少なく35.9%止まり。フォークと全く同じ球数だったことからも、直球の制球に苦しんだことを物語っている。

 《オスナ相性通りの結果》オスナ(ヤ)が山本(オ)から先制の2点適時打とシリーズ1号ソロ。山本とは試合前まで交流戦、日本シリーズを合わせて通算10打数4安打の打率.400だったが、相性通りの好結果を残した。また、先制打は村上の四球直後に打ったもの。今季、村上が四死球だった直後のオスナの打席結果を見ると、公式戦とCS、この試合も含めて42打数11安打の打率.262で3本塁打、14打点。8月31日巨人戦での先制2ラン、10月12日CSファイナルS第1戦での先制3ランなど殊勲安打も5本と、主砲が歩かされた後に、貴重な一打を放っている。

 

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