ヤクルト・奥川がプロ初勝利!初回4失点から豪雨54分中断も耐えた5回5失点

[ 2021年4月9日 05:30 ]

セ・リーグ   ヤクルト11-7広島 ( 2021年4月8日    神宮 )

<ヤ・広>5回2死、会沢を三振に抑える奥川(撮影・村上 大輔)
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 雨にも、中断にも負けなかった。ヤクルトの奥川恭伸投手(19)が8日、広島戦に先発。5回10安打5失点ながら打線の援護に恵まれてプロ初勝利を挙げた。初回にいきなり4点を失い、さらに2回途中には豪雨で54分間の中断もあったが、集中力を切らすことなく粘投。今月16日に20歳となる黄金右腕が記念星を挙げ、チームは勝率5割に復帰した。

 常に前を見て進んできた。だからどれだけ点を取られても仲間が助けてくれたのだろう。すっかり雨が上がった神宮球場。奥川は記念のボールを大事そうに握り、はにかんだ。

 「野手の皆さんに感謝しかない。本当にありがたい気持ちでいっぱいです」

 元監督で昨年2月に死去した野村克也氏の追悼試合で黒星を喫した3月28日の阪神戦から中10日のマウンド。初回2死から5連打で4点を失った。だがその裏に打線が4得点。2回は2球を投げたところで豪雨に見舞われた。実に54分間の中断。経験が浅い右腕にとって試練以外の何ものでもない。それでも「また先発する気持ちで」と自らに言い聞かせ右肘を温め続けた。もちろん続投。5回までに10安打を浴びて5失点も「何とか集中を切らさずに投げられた」と笑顔で振り返った。

 子供の頃から立ち止まることを知らなかった。野球をやっていた父・隆さんの影響で新聞紙を丸めて作ったボールを家で打って遊んだ。先に野球チームに入った7歳上の兄・圭崇さんの練習に同行するようになったのは3歳から。一人で飽きることなく壁当てをする姿に周囲の親たちから「マグロ」と呼ばれた。理由は「止まったら死んでしまう」と思うほど元気だったから。常に動き回っていた。

 全力で走り続ける野球人生。星稜で甲子園を沸かせ、プロの扉を叩いた。デビュー戦は昨年11月10日のシーズン最終の広島戦。3回途中5失点の屈辱は忘れない。あれから投球動画を見返すのが習慣の一つとなり、見るたびに「今年はやってやる」と奮い立った。その広島からの記念星。あの時と同じ5失点でも、成長を見せた。

 奥川は「今日は勝たせてもらった。自分の力で勝たせられる投手になりたい」と言葉に力を込める。無限の可能性を秘める19歳にとっては単なる通過点。プロの世界でも止まることなく駆け続ける。(青森 正宣)

 ○…高卒2年目の奥川(ヤ)が19歳11カ月でプロ初勝利。ヤクルトで10代投手が白星をマークするのは、18年に2年目の19歳で3勝した梅野以来3年ぶり。梅野は3勝全て救援勝利で、先発勝利に限ると08年に1年目の18歳で2勝した由規以来13年ぶりとなった。

 ○…奥川の父・隆さんは石川県内の自宅でテレビ観戦。周囲に支えられての初勝利に「野手の方たちが点を取ってくれて、5回まで投げさせてもらいました。皆さんのおかげで1勝することができました」と感謝した。息子が踏み出した第一歩。「チームに恩返しできるような投球をしていってもらいたい」と次回以降の投球に期待を寄せていた。

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