15キロの自転車通学で夢見た甲子園 東播磨・田中の奮闘はチームに勇気与えた

[ 2021年3月23日 05:30 ]

第93回選抜高校野球大会第3日第3試合 1回戦   東播磨9ー10明豊 ( 2021年3月22日    甲子園 )

<明豊・東播磨>6回、マウンドに足を運んで若杉(左)に笑顔で声をかける東播磨・田中(撮影・北條 貴史)
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 【お帰り!春球児】甲子園は時に厳しい試練を与える。体を張り続け、必死にワンバウンドを止めていた田中慎二のミットを2投手合計186球目がすり抜けていった。

 延長11回、先頭打者に四球を与えた投球も自らの喉で止めた。試合後、球場医務室の担当者から「大丈夫か?」と声をかけられ、守りの要は静かに首を縦に振るだけだった。

 マウンドに立った鈴木悠仁、若杉錬が制球に苦しんでいるときに「周りを見て落ち着け」「どんな球でも止めたるから」と励まし続けた。福村監督は「最後はああいう形にはなったが、彼の体を張ったプレーはチームに勇気を与えてくれた」と強く称えた。

 東播磨で野球をするために、兵庫県加西市の自宅から、15キロ以上の道のりを毎日片道1時間半かけて自転車で通った。この日のために野球用ソックスを贈った父・高弘さん(52)は「不器用だけど、練習の準備、後片付けは大事にしていた。背番号をもらえたことを本当に喜んでいた」と打ち明けた。山を越え、路肩もほとんどない暗い道を走りながら、夢に見た大舞台。その甲子園は夏に田中たちと再会する日を、きっと待っている。(鈴木 光)

 ◆田中 慎二(たなか・しんじ)2003年(平15)7月2日生まれ、兵庫県加西市出身の17歳。小学校では九会野球スポーツ少年団で野球を始める。加西中では県大会ベスト8。東播磨では昨秋から捕手のレギュラーで全試合に出場。1メートル75、65キロ。遠投100メートル。右投げ右打ち。

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