【藤川球児物語(12)】03年Vイヤーの明と暗…忘れられない被弾

[ 2020年11月24日 10:00 ]

2003年4月11日の巨人戦で9回に同点3ランを浴び、ぼう然と打球を見送る藤川球児。

 プロ初勝利の喜びも長くは続かなかった。藤川球児が連勝を狙った2002年9月17日の中日戦(ナゴヤドーム)。5回1安打無失点と好投しながら、6回に崩れた。さらに9月23日の巨人戦(甲子園)では松井秀喜に2ラン、ソロと2発を許し、7回3失点。松井一人に打たれた格好だ。

 シーズン最終登板となった10月6日のヤクルト戦(甲子園)も稲葉篤紀、岩村明憲の本塁打などで5回5失点。02年はすべて先発で12試合に登板し、1勝5敗という成績に終わった。

 「1勝してから、まともな投球ができとらん。トータルではええ球投げてる。打たれてもいいが、打たれ方が悪すぎる。自分で気がつかないと。またファームからや」

 闘将・星野仙一の信頼を得るまでには至らなかった。課題は出ていた。立ち上がりは良くても、中盤につかまる。1試合は良くても、2試合3試合と内容が続かない。そのことは藤川も分かっていた。

 5年目の03年。課題を克服すべくキャンプに取り組んだが、開幕1軍からは外れた。4月8日に昇格すると、中継ぎで2試合に登板し、3回無失点。手応えをつかんで臨んだのが4月11日、このシーズン最初の巨人戦(東京ドーム)だった。9回2死まで7―1と6点リード。だが、巨人はここから反撃。2点を返され、2死一、三塁。仁志敏久をカウント0―2と追い込んだところで、星野は「投手・藤川」を告げた。ドームがどよめく継投だった。

 仁志に初球を中前適時打されると、続く代打・後藤孝志に同点3ランを許した。「(登板が)急だったのは関係ない。チームに迷惑をかけた。本当に申し訳ない」と語った試合は今も忘れない。今年10月23日、自身最後の東京ドーム遠征時に、公式Twitterを更新。「東京ドームの思い出」として「2003年、後藤選手に同点ホームランを打たれたことかな」と本塁打を打たれたシーンを回顧した。優勝イヤーの明と暗はこの1球に集約されていた。=敬称略=

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