広島・新井独占手記 二度と戻れないと思ったカープ “弟”たちと最高の4年間

[ 2018年11月4日 08:00 ]

SMBC日本シリーズ第6戦   広島0―2ソフトバンク ( 2018年11月3日    マツダ )

9回、守備につき、一塁ベースに触れる新井(撮影・北條 貴史) 
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 広島は3日、ソフトバンクとの日本シリーズ第6戦(マツダ)に0―2で敗れて4連敗を喫し1984年以来、34年ぶりの日本一には届かなかった。今季限りで現役引退する新井貴浩内野手(41)は8回に代打で出場したが遊ゴロに終わった。20年間のプロ人生に終止符を打ち、スポニチ本紙に独占手記を寄せた。

 最高の舞台を最後にユニホームを脱ぐことができた。こんなに幸せな野球人生はない。今回と同じように引き分けから始まった32年前の日本シリーズ、当時は小学4年生のカープファンだった。第8戦に敗れた後、引退する山本浩二さんが胴上げされた光景を覚えている。同じように…とは思わない。ただ、完全燃焼できたと胸を張って言える。やり残したことは何もない。

 後輩たちには感謝しかない。この6試合。勝敗を超えて素晴らしい戦いだった。ベンチから応援する時間が多くても、一緒に戦えたことが誇らしい。みんな2年前の日本シリーズから成長し、本当にチームとして一つにまとまった。誠也は自分が打った時だけでなく、チームメートが打った時も全身で喜びを表した。初めて4番を任され、自分のことで精いっぱいだった昨季とは違う。ひと回りも、ふた回りも大きくなった。みんな自慢の後輩たち、自慢の弟たちだ。日本一の夢は弟たちに託したい。きっとやってくれる。

 すべての人との出会いに感謝したい。入団当時は駒大の先輩で大下剛史さんがヘッドコーチだった。厳しく指導された。だから、いまがある。歴代の監督にも感謝しかない。山本浩二さんには迷惑ばかりをかけた。金本知憲さんには若い頃はかわいがってもらって、どこ行くにも一緒だった。不振で一番落ち込んだ時に打撃を教えてくれた。

 そして、黒田博樹さん。自分にないものを持っている。プロとしての厳しさであり、プライドだ。実績を積んだメジャーから帰ってきても全く変わっていなかった。だから格好いい。ぶれない。自分をしっかり持っていて、どこにいこうが流されない。

 野球の神様はいる…と信じてやってきた。中学でも高校でも大学でも自分よりもうまい選手はたくさんいた。長所は何か…と考えた時にへたくそでも、とにかく一生懸命やる、全力で何事も取り組むしかないと思った。プロである以上、結果は大事だ。同時に結果が全てではないとも思う。だから、20年間を振り返った時に誇れるのは数字や記録ではない。どんな時も一生懸命にやるという原点だけは忘れなかった。

 もう二度と戻れないと思ったカープで最高の時間を、それも4年間も過ごすことができた。復帰後最初の打席では罵声を覚悟した。なのに…。あの大歓声はいまも胸に残る。もうユニホームを脱いでもいいとさえ思った。それほど大切な宝物をもらった。ファンの方には感謝以外ない。本当にありがとうございました。(広島東洋カープ内野手)

※新井手記の拡大版は5日発売の「広島カープ2018日本シリーズ激闘号」でお楽しみください。

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2018年11月4日のニュース