【金本阪神超変革1年目3】誤算は主軸の不振 使い続けた若手は成長

[ 2016年10月5日 09:50 ]

1番・高山(左)、2番・横田で開幕した今季
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 『超変革』=「若返り」ではない。ただ、昨季までの閉塞感を打ち破るには、やはりフレッシュな選手の積極起用が不可欠だった。結果的にかつてないほどの「プロ初…」が誕生。変革元年の申し子とも言える若虎たちが、次々と1軍でのキャリアを刻んだ。

 1番・高山、2番・横田という『超変革』の息吹を感じさせるオーダーで開幕した今季。投手を除く1番から8番までの先発オーダーは実に126通りにのぼった。プロ初安打を放ったのは高山、北條ら7人。支配下登録の野手35人中31人が1軍で起用された。

 就任後「競争やから」と口酸っぱく繰り返してきた金本監督。先入観を持たず、できるだけ多くの選手を1軍で使った。“結果を出せば上げる”という単純明快な方針は、2軍選手の競争意識とモチベーションをあおった。もう1つの狙いは、選手を自らの目で見極めること。単純な打力、走力、守備力だけではない。ここ一番での度胸、教えたことの吸収力、アドリブ力、元気良さ…。解説者の立場ではわからない選手の特徴を把握できたのは、来季への大きな貯金となったはずだ。

 「勝ちながら育てる」ことを目指した指揮官の誤算は、主軸の不振だった。レギュラーと目された福留、ゴメス、鳥谷、西岡の4人のうち、本来の力を発揮したのは福留一人。中でも鳥谷の攻守両面での急下降は計算外だった。主力が若手を引っ張りながら育てていくはずが、成長途上の選手が重責を担わざるを得ないケースもあった。前半戦で3番を任され、トンネルに入ってしまった江越はその一例。初めて単独最下位に転落した7月3日の中日戦後「育成優先なんて言ってないし、思っていない。じゃあ、誰を使えばいいの?現状のベストメンバーだから」と話したのは、偽りのない本音だったろう。

 残念ながら育成と優勝の両立はできなかった。ただ、ぶれない信念で、時にはミスに目をつぶって使った若虎の中から、将来のスター候補が現れたのも確かだ。今季最後の7連勝は大勢が決した後のものとはいえ、若手主体同士の戦いでは敵軍を圧倒した。6―0で巨人に快勝した最終戦は、1番・北條、2番・高山、4番・原口と上位4人中3人が今季初めて安打を記録した選手。未来への明るい光は差し込んできている。
 (山添 晴治)

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2016年10月5日のニュース