【石井一久クロスファイア】大谷なら実現できる!“もう1ランク上”の163キロ

[ 2016年6月15日 09:11 ]

12日に阪神戦で163キロを投げた大谷

 日本ハムの大谷が12日の阪神戦で160キロ台の速球を連発する投球を見せた。最初から飛ばし、自身が持つ日本球界最速の163キロも5度計測。一体、どこまで記録を伸ばすのかに注目が集まっている。球速的にはもう少し出るかもしれない。でも、僕が興味があるのは、スピードガンの数字ではなく、球の質だ。

 5日の巨人戦で初めて163キロを出した時、大谷は「手応えはなかった。試合後に163と分かったぐらいなので」とコメントしていた。この言葉こそ、彼のポテンシャルがまだマックスでないことを示している。投手にとって大事なのは感覚。テークバックから力が体にうまく伝わり、腕がムチのようにしなり、全て一体になってボールを解き放つ。その感覚がはまった時が、投手にとって一番いいボール。すなわち、質の高いボールなのだ。大谷の場合、同じ163キロでも、もう1ランク上の163キロを投げることができるはずだ。

 大谷の163キロは別次元としても、今では150キロ台の速球を投げる投手はゴロゴロいる。メジャーも同じで、球速はどんどん上がっている。あるデータによると、昨季、平均球速が95マイル(約153キロ)を上回った投手は46人もいたという。トレーニング方法の進化により体が強くなり、投球メカニックや力の使い方も合理的になってきたことが要因の一つだ。

 メジャーで今、先発投手で最も速い球を投げるといわれているのが、メッツの23歳右腕シンダーガード。今季の平均球速は98・3マイル(約158・2キロ)という。打者としてもドジャースの前田から2打席連続本塁打するなど、身体能力は高い。

 大谷とシンダーガードを比較してみると、どちらも爆発的な直球を投げるが、シンダーガードはコップの中の水で例えると、水があふれだしそうなくらい、いっぱいいっぱいの160キロで、これ以上、質が上がるかどうか。一方、大谷はコップにまだ8割の量しか水が入っていない160キロだ。球速ではなく、質の向上を追求すれば、さらに異次元のレベルに達すると思う。(スポニチ本紙評論家)

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2016年6月15日のニュース