西武の“鬼ちゃん” 9年目初サヨナラ打 8回バントミスの汚名返上

[ 2016年5月22日 05:30 ]

<西・ソ>9回2死一、二塁、サヨナラとなる適時二塁打を放ちナインから祝福される西武・鬼崎(右から2人目)

パ・リーグ 西武4―3ソフトバンク

(5月21日 西武プリンス)
 「鬼ちゃん」は試合直後、一人で室内練習場にいた。プロ9年目で初のサヨナラ打。全身を駆け抜けた喜びはすでに消えていた。黙々とバント練習を繰り返す。「もう気持ちは切り替えてます。失敗しちゃったんで」。それが西武・鬼崎の野球に向き合う姿勢だった。

 「あんまり覚えてなくて…。芯に当たった感触はあった。気持ち良かった」。同点の9回2死一、二塁。打球は右中間を抜けた。直前の8回無死一塁で犠打を失敗。それでも仲間がつなぎ、栗山が同点打を放った。「みんなのおかげで、取り返すチャンスが回ってきた」。野球にミスは付きもの。いかに挽回するかが運命を分ける。「彼の意地が見たかった。気合を買った」と田辺監督。鬼崎は見事に応え、チームは3連勝となった。

 ベンチでは率先して声を張り上げるムードメーカー。周囲に「鬼ちゃん」と呼ばれるいじられキャラだ。そんな男が「立ち直れなかった」というほど落ち込んだのは、4月22日の楽天戦(西武プリンス)。9回1死満塁で、併殺なら試合終了だった川本の三ゴロを悪送球した。悪夢の逆転負けで、自身は即2軍落ち。試合後は午前1時近くまでロッカーにポツンと残り、自責の念と闘った。

 「野球はきついのが9割。何度も嫌いになりそうになったし、辞めたいと思った」。それでも「結局、野球が好きなんです」と笑う。どん底からはい上がってのサヨナラ打に「野球の神様のご褒美ですかね」と感慨深げに話した。

 室内での居残り練習を終え、球場への帰り道。少年ファンから「何かください!」とねだられると、気前よくアンダーシャツを差し出した。「それ、使ってないから」。優しい笑みは、CMで菅田将暉が演じて人気の「鬼ちゃん」にも負けていなかった。 (鈴木 勝巳)

 ▼西武・多和田(本拠地初先発で5回6安打2失点。プロ初勝利はならず)前回(2回途中KO)よりは勝負できたかな。一歩一歩、成長していきたい。

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