通算100勝到達の金子の凄さ…勝率・641はレジェンドの域

[ 2016年5月22日 10:32 ]

通算100勝目を挙げた金子

 オリックスのエース金子千尋投手が、20日のロッテ戦で勝利投手となり、史上133人目の通算100勝を達成した。開幕当初は絶不調だったとはいえ、到達は時間の問題だろうと思っていた。特筆すべきは、100勝56敗の勝率・641で到達したこと。実は2週間ほど前に、1軍投手コーチだった酒井育成担当コーチが、金子のすごさをこう語っていた。

 「投球、けん制、フィールディング、試合を読む力、天候への対処…。とにかく欠点になるものがないでしょ。だから、この勝率になるんです。昔、米田さんに勝率6割を目指せと言われたが、金子の数字はすごい。というより、これはもうレジェンドの領域じゃない?」

 酒井コーチに言われて、初めてその意味に気がついた。実はNPBの記録集に、勝率上位投手の一覧表がある。条件としては2000投球回以上。見てみると、そうそうたる顔ぶれだった。

 (1)藤本英雄・697
 (2)稲尾和久・668
 (3)斎藤雅樹・652
 (4)杉内俊哉・648
 (5)杉浦 忠・638
 (6)杉下 茂・636
 (7)別所毅彦・635
 (8)スタルヒン・633
 (9)山田久志・631
 (10)野口二郎・630

 金子は現在、1443回を超えたところで、まだ参考記録扱いではあるが、勝率・641は名投手が並ぶ中で歴代5位に相当する。しかも、近年のオリックスはお世辞にも強いチームとは言えないわけだから、確かにこれは「レジェンド」だ。だから前回14日の登板後に、本人に先の数字を見せてみた。「初めて見ました」という割には、あまり興味を示さなかった。

 「今まで通算の勝率は意識したことがなかった。その年、その年の勝率は少し考えたことはありますけど。元々(タイトルには)あまり興味がない。自分の成績では、一度も負け越したことがないというのが(誇れる数字として)ありますけど」。そう言って、表情を崩さなかったのが、何とも印象的だった。

 20日の達成直後、もちろん高勝率が話題に上がったが「たまたま斉藤和巳さんの記録(79勝23敗の勝率・775)を見ていたら足元にも及ばない」と、自ら口にした。そこで、ようやく気がついた。おそらく、金子には「満足感」がない。満足感を持つと向上の妨げになるからで、常に頭の中から排除しているのだろう。「レジェンド」と言われて、きっと必死に自分より上の成績を探したのではないか。そこで、斉藤和巳の記録にたどり着いた。きっと、そうだろうと解釈した。

 試合終了後、平野が冗談でスタンドへ投げ込もうとした記念球は、最後は金子に渡った。球団関係者に「金子はいつもボールを大事に持って帰る」と聞いた事があった。果たして何個目だろうかと思い、聞くと「区切りのもの以外は、オフのイベントなどでファンの方に配っているんです。サインと日付を書いたものを」と話してくれた。なるほど、それも金子らしい。ファンの喜ぶ顔は、何よりの原動力になる。レジェンドになるまで、たくさんのボールをプレゼントするつもりだ。(記者コラム・鶴崎 唯史)

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2016年5月22日のニュース