日本選手には朗報?ムネリン 併殺崩し禁止新ルール「ありがたい」

[ 2016年2月27日 05:30 ]

昨季のナ・リーグ地区シリーズ第2戦で、メッツのテハダ(上)はドジャース・アットリーのスライディングで右腓骨を骨折(AP)

 「殺人スライディング」は打者もアウト――。大リーグ機構(MLB)と大リーグ選手会は25日(日本時間26日)、二塁ベース付近で走者が併殺を防ぐために繰り出す危険なスライディングを禁止する新ルールを採用したと発表した。走路を変えたりするなど危険だと判断されれば、走者だけでなく打者もアウトになる。このプレーについて論議を重ねている日本球界でも、早ければ来季から採用される可能性がある。

 併殺を阻止するための危険なスライディングが即、併殺となる。一塁走者に加え、打者もアウトになるためだ。MLBのクリス・マリナック上級副社長は今回のルール改正を「ここ数年議論してきたが、さまざまな要因がこのオフに重なり変更を加えることになった」と説明。このプレーはビデオ判定の対象にもなり、野手が捕球時に足をベースにつけているかも確認できるようになった。

 急速に議論がヒートアップしたのは昨年だった。10月10日に行われたドジャース―メッツのナ・リーグ地区シリーズ第2戦。一塁走者のアットリーが併殺阻止を狙って、遊撃手テハダの足元へ猛烈なスライディング。テハダは右腓(ひ)骨を骨折し、以降のポストシーズンでも離脱を余儀なくされた。9月にもパイレーツの新人遊撃手姜正浩(カン・ジョンホ)が左膝に、じん帯断裂や骨折の重傷を負った。

 日本選手も09年にレイズの岩村(現BCリーグ・福島選手兼監督)、11年にツインズの西岡(現阪神)らがこのプレーにより負傷し、長期離脱を強いられた。カブスとマイナー契約を結び、招待選手としてメジャーキャンプに入った川崎は、この決定を歓迎。主に二塁と遊撃を守ってきただけに「だいぶ、ケガさせられてきたので、ありがたいといえばありがたい」と述べた。一方、走路を変えない場合に「悪意のないスライディング」かどうかの判断は、審判に任されている部分もある。際どい交錯プレーが全てなくなるわけではないだけに「(走者を)かわして投げるのも見せどころなので、練習もよくしていた。意識は変えず、かわす前提でやっていきたい」とも話した。

 一部の米メディアはこの日、「アットリー・ルールが採用された」と報じたが、本人は自身の危険なスライディングが新ルールにつながったことを否定。「内野手、走者、審判のそれぞれが適応していく問題」と冷静にコメントした。レンジャーズの遊撃手で俊足のアンドルスは「野手としてはいいルールだし、走者としては嫌なルール」とメリットもデメリットもあるとした。また姜正浩は「選手を守るためにはいいこと」と歓迎した。

 日本球界では近年、本塁打のビデオ判定、本塁上でのコリジョン(衝突)など、大リーグに追随する形でルール変更を行ってきた。併殺崩しのプレーについても論議を重ねているだけに、新たに導入される可能性は高い。それに伴い、走塁のスタイルや、内野手の動きにも影響を与えそうだ。

 ▼マリナーズ・青木 僕も併殺崩しのスライディングはするけど、野手がプレーする余地を残しているので、そんなに影響はないと思う。

 ▼MLB野球規則6・01のj(要旨) 走者が併殺を阻止するために走者が「悪意のないスライディング」をせず、野手に接触する(しようとする)場合は、守備妨害となる。走者がこのルールを違反した場合、審判は走者と打者の両方にアウトを宣告する。

 ≪MLB過去の日本人併殺阻止≫

 ☆松井稼頭央(メッツ) 04年7月30日のブレーブス戦。初回にジャイルズの併殺阻止のスライディングを受けて左すねを打撲。スタメンを3試合外れた。05年6月16日のアスレチックス戦では、9回1死一塁で走者のケンドールに足を激しく蹴られ、左膝打撲でDL入り。

 ☆岩村明憲(レイズ) 09年5月24日のマーリンズ戦。8回1死一、二塁の場面で、併殺を防ごうとした一塁走者のコグランと二塁ベース上で激しく接触。左膝の前十字じん帯断裂で全治8カ月前後とみられたが、手術の際に部分断裂と判明し、8月29日のタイガース戦で早期復帰となった。

 ☆西岡剛(ツインズ) 11年4月7日のヤンキース戦。7回1死一塁で、併殺阻止を狙ったスウィシャーの左膝が左足を直撃。右すねの腓(ひ)骨を骨折し、開幕6戦目で戦線離脱。6月16日のホワイトソックス戦で復帰。

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2016年2月27日のニュース