「マスコミにつぶされない」早実・清宮の強さ メンタルも超高校級

[ 2015年8月3日 09:45 ]

バスから降り、うつむき加減でホテルへ入る早業・清宮

 8月2日、甲子園に出場する早実の怪物ルーキー・清宮幸太郎内野手が大阪入りした。混乱を避けるため、移動便の公表はなし。途方に暮れながらも、やはり世間の注目の的である清宮の動きは追いたい。そう思いながらイチかバチか新横浜駅で3時間以上待った。

 すると場の空気がそわそわし始めた。「来るのか」。丸刈りの集団が現れた。早実ナインだ。取材はNG。無事に新幹線に乗るのを見届けようと眺めていようとじっと見ていると一瞬、清宮と目が合った。「追っかけ回してごめんね」という思いで会釈すると、ニッと笑って軽く会釈を返してくれた。救われる思いだった。

 「まだ1年生なのにマスコミは騒ぎすぎだ」とか「マスコミにつぶされないか心配だ」――そんな意見を目にする。そのマスコミの当事者として、ごもっともだと思う。高校野球100年の節目に登場したスターを大きく取り上げるのは職業上仕方ない一方、ちょっとやりすぎなんじゃないかと正直なところ思ってしまう部分もある。そもそも「マスコミにつぶされる」とは何だろう。それまで全く衆人環視の目にさらされることがなかった選手がマスコミによって良くも悪くも多くの人の目にさらされ、我を見失う状態なのだと思う。

 そう考えると、清宮はマスコミごときに簡単つぶされるような男ではない。両親の教育の下、いろんな経験をし、いろんな人と出会ってきたのだろう。まだ16歳だが、とにかくブレていないし、語録ができてしまうほど自分の言葉を持っている。常に「相手じゃない。自分たちの野球をすれば勝てる」と言い続けているのが良い例だ。

 両親も清宮の高校入学を機に原則、取材は受けない方針を貫いている。「野球部に預けた以上、親がいろいろと話すべきではない」という思いがあるからだ。今夏西東京大会中、父の克幸氏は応援席から離れて観戦。母・幸世さんは早実の白い応援Tシャツと帽子姿で他の保護者と一緒に飲み物の用意などに奔走し、応援席でメガホン片手に声援を送り続けていた。

 勘違いせず、自分の立ち位置をわかっている。これほど強いものはないと、清宮家を見ていてつくづく思う。移動中、懸命に脇を固めていたチームメートの姿も印象的だった。そんな清宮が甲子園でどんな言葉をつむぐのか。それを余すことなく、まっすぐに伝えたいと思う。(松井 いつき)

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2015年8月3日のニュース