日高が引退 今年は昇格わずか1回…「それでは戦力じゃない」

[ 2014年10月4日 05:30 ]

引退会見を終えた日高は花束を受け取る

 最後まで練習に対する姿勢は変わらなかった。9月末に引退を決意したが、その日も阪神・日高は鳴尾浜球場にいた。打撃練習中も外野で若手が放つ打球を黙々と追っていた。大粒の汗を流しながら走っていた。

 「姿だよ。いつもだよ。あの年でも一生懸命だ。必ず若手も見ている」

 ベテランが練習に励む姿に、2軍関係者も目を細めていた。

 当然ながらその関係者は今季限りでユニホームを脱ぐことは知らない。しかし日高の心は決まっていた。引退を決意しながらも最後まで1軍昇格を目指して戦っていた。晴れやかな表情を見せた会見では完全燃焼を強調した。

 「プロである以上、1軍の戦力にならないといけない。今年は1回しか上がれなかった。それでは戦力じゃない。野球ができなくなる寂しさはある。でも悔いはない」

 常に覚悟と危機感を持って戦っていた。1軍戦力になれなければ辞める―。それが美学だった。昨年8月25日の中日戦(ナゴヤドーム)では通算1500試合出場も達成。昨年4月18日の巨人戦(東京ドーム)では移籍2号を放って宿敵を破った。

 「思い出は伝統の一戦で本塁打を打てたこと。伝統のある球団でタテジマを着させてもらったことに感謝。僕は幸せ者」

 オリックス時代には選手会長を務めるなどリーダーとして存在感を示した。数日前には戦力外となった吉見、高山を食事に誘いねぎらった。誰からも愛された心優しき男が、19年間の現役生活に幕を下ろした。

 ◆日高 剛(ひだか・たけし)1977年(昭52)8月15日、福岡県生まれの37歳。九州国際大付から95年ドラフト3位でオリックス入り。長打力のある捕手として02年に12本塁打。08年は初の規定打席に到達し13本塁打、打率・269。09、10年にはオリックス選手会長を務めた。12年オフにFA権を行使して阪神入り。1メートル82、90キロ。右投げ左打ち。

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2014年10月4日のニュース