安楽 プライド捨てて「勝つ投球」 甲子園では「最速目指す」

[ 2013年7月28日 06:00 ]

今治西・神野を二塁ゴロに打ち取り優勝を決めガッツポーズする済美・安楽

愛媛大会決勝 済美5―2今治西

(7月27日 坊ちゃん)
 あの剛腕が聖地へ帰ってくる。第95回全国高校野球選手権大会(8月8日から15日間、甲子園)の地方大会は27日、23大会で42試合が行われた。愛媛大会では今春センバツ準優勝校の済美のエース、安楽(あんらく)智大投手(2年)が今治西を相手に10奪三振、無四球の2失点完投で、春夏連続の甲子園出場を決めた。

 春に届かなかった頂点に、再挑戦する権利を手にした。今春センバツ準優勝投手の安楽が、昨夏の愛媛大会準決勝で敗れた今治西に雪辱。春夏連続で甲子園行きの切符を勝ち取った。

 「ここまで(甲子園での)忘れ物を取りに行くために必死でやってきた。だから、きょうはストレートという自分の武器、プライドを捨てました。貪欲に勝ちにこだわって、結果が出て、正直ホッとしています」

 前日の準決勝・川之江戦で自己最速157キロを計測したが、この日は152キロ止まり。球速を追い掛けず、制球重視に切り替え、準々決勝から3試合連続無四球。さらに普段よりスライダーとスローカーブを多投し、相手に狙いを絞らせなかった。被安打8、10奪三振。112球で勝利をたぐり寄せた。上甲正典監督も「勝つ投球をしようと話しました。それがエースの条件。きちんと守った」と、約束を果たした右腕を称えた。だからだろう。2年生ながら胴上げされ、3度も宙を舞った。

 センバツでは5試合(46回)で772球を投げた。この球数に米メディアは「正気の沙汰ではない。子供に対する虐待だ」と批判し、レンジャーズのダルビッシュも「学年別に球数制限とか…」と意見。一方で、小泉進次郎衆院議員は「球数制限すると名勝負は生まれない」と反論するなど社会問題にまで発展した。

 その中で、安楽は「あの負けがあったから今の自分がある」と成長の糧とした。それは今大会で「球数」と「四死球」に表れた。対戦校、投球回数が違うだけに単純比較はできないが、今大会5試合の球数は506球(40回1/3)。力一辺倒の投球から脱却したことで、1回当たりの投球数はセンバツ時の17球から13球に減少。四死球も1試合あたり2・8個から1個に減った。

 それでも、甲子園では思い切り暴れる。「157キロが出たので、甲子園では甲子園最速を目指したい。自分の真っすぐでスタンドがどよめく投球をしたい」。目指すは日南学園(宮崎)・寺原(現ソフトバンク)が01年夏に計測した158キロ超え。そして優勝だ。桐光学園・松井が消えても、今夏の甲子園には安楽がいる。

 ◆安楽 智大(あんらく・ともひろ)1996年(平8)11月4日、愛媛県生まれの16歳。小2から野球を始め、道後中では松山クラブボーイズに所属し、2年夏に県大会準優勝。済美では1年夏から登板。好きな投手はダルビッシュ(レンジャーズ)。遠投110メートル、50メートルは6秒5。握力は右56キロ、左40キロ。1メートル87、85キロ。右投げ左打ち。

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