西野 マエケンに勝った!年俸50分の1、育成史上初2桁12K

[ 2013年5月21日 06:00 ]

<ロ・広>日本のエースに投げ勝ったぞ!8回1/3を2失点に抑え5勝目を挙げたロッテ・西野

交流戦 ロッテ3-2広島

(5月20日 QVC)
 育成出身が、日本のエースに勝っちゃった。ロッテの西野勇士投手(22)が20日、広島戦で8回1/3、6安打2失点で今季5勝目をマーク。プロ初完封こそ逃したものの育成ドラフト出身では史上初の2桁奪三振となる12三振を奪い、前田健太投手(25)に投げ勝った。プロ5年目ながら新人王の資格を持つ22歳右腕。日本ハムの大谷翔平投手(18)らとのパ・リーグ新人王争いで一躍、筆頭候補に躍り出た。

 興奮も舞い上がることもなかった。自ら「謎の男」と言うだけのことはある。西野だ。日本最高の投手、前田健に投げ勝ち、育成ドラフト出身選手では史上初の2桁12奪三振。そんな快挙も、大事ではなかったらしい。

 「エースに勝つと気持ちいい。でも、勝負するのは相手打者。投げ合いを意識することはなかったし、前田さんの投球を見ることもなかった。勝てれば何でもいい」

 年俸440万円と2億1000万円の前田健。実に50倍近い差だ。だが、3月に行われたWBCの戦いを「実はあまり見ていなかった」と笑い飛ばした西野に重圧などなかった。初回から内角を攻め切った。4回のルイスには顔付近に速球を投げ、にらみつけられた。それでもひるまず内角144キロ直球で見逃し三振。審判への暴言で退場となった相手を尻目に「インハイの球も捕手の要求通り」とサラリだ。9回1死二、三塁で降板。自己最多の143球も最後は力尽きた。三振を多く取ったことを後悔し「3球でスリーアウトを取るのが理想」と言った。

 負けず嫌い。学業の成績が優秀だった中学時代も周囲の反対を押し切り野球の強豪、新湊に進学した。大学進学の勧めも蹴ってプロを選んだ。「年が近い人を見ると負けたくない。きのうも(2歳年上の)大嶺さんが完封したので負けたくなかった」と言った。フォークも新湊1年時にマスターしたが、あえて3年夏の県大会まで封印。信念を貫く頑固さも持ち合わせる。先月28日に地元・富山から上京した両親と千葉市内の中華料理店で会食。プロ初勝利のウイニングボールを手渡して「1軍に食らいつきたい」と言った。ハングリー精神が西野を支える。

 昨年11月に支配下選手登録された右腕にとって1軍は刺激的な毎日。だからこそ、オフの時には「時間をゆっくり使うこと」だけを意識する。何も考えず、長風呂に入り、自由を実感するという。精神的なゆとりと、良い意味での鈍感さを生むことにつながっている。

 チームは前田健から7戦目で初勝利。西野はチームトップの5勝目だ。新人王資格もあり、このまま快投が続けば、タイトルも夢ではなくなる。

 「チームを引っ張る意識はない。まだまだそんな器じゃない。僕が勝つことで、刺激を与えられたらいいとは思う」

 携帯電話に入るメールの数は格段に増えた。だが「変化の実感はないんです」と笑う。この男、本当にずぶとい。

 ▼ロッテ伊東監督 西野は8回終了時点で、行かせてくださいと言ってきたので行かせた。チームとして自信がつく勝ち方だった。

 ≪育成出身の2桁奪三振は初≫西野(ロ)が8回1/3を6安打2失点、12三振を奪い今季5勝目。育成ドラフト出身者の2桁奪三振は西野が初めてだ。プロ5年目の西野は、今季の新人王有資格者。育成ドラフト出身で新人王となれば08年山口、09年松本哲(ともに巨)に次ぎ3人目。昨季は同じロッテの益田が受賞しており、2年連続で新人王を受賞すればチーム初となる。

 ◆西野 勇士(にしの・ゆうじ)1991年(平3)3月6日、富山県生まれの22歳。中学までは外野手兼三塁手で、新湊入学後に投手転向。3年夏の富山大会決勝は高岡商に2―3で惜敗し甲子園出場はなし。08年育成ドラフト5位でロッテ入団。昨年11月に支配下登録された。1メートル82、82キロ。右投げ右打ち。

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2013年5月21日のニュース