【野球のツボ】なぜ日米共通の「統一球」にしないのか

[ 2013年4月24日 11:14 ]

対広島6回戦で5号2ランを放った巨人・阿部。チームは昨季の倍以上のペースで本塁打を量産している

 今年のプロ野球で一番の変化はボールだ。昨年、全くと言っていいほど飛ばなかったボールが、今年は劇的に変化している。現場の選手に聞いても「まるで違う」「よく飛びます」という声を耳にする。

 昨年、144試合で94本塁打だった巨人が、今年は20試合消化時点で27本塁打。単純計算だと、今季は倍以上の190本以上を記録しそうな勢いだ。

 昨年はオリックスのコーチとして「統一球」を経験したが、練習でのノックでも思ったようにボールが飛ばずに悪戦苦闘した経験がある。李大浩も「日本のボールは飛ぶと聞いてきたのに、これじゃ韓国のボールの方がいい」と頭を抱えていたものだ。それを思えば、今年は雲泥の差だ。

 「ボールが飛ぶ」という声に対して、NPBは「統一球の仕様は変えていない」とコメントを出している。メーカーも、同様の見解を示しているが、データも選手の声も、それとは逆のものになっている。NPBがあくまでこだわるなら、公開で昨年のボールと今年のボールの反発力テストをしてみたらいい。きっと興味深い結果が出るだろう。

 打者が好むのは飛ばないボールよりも、飛ぶボールだ。投手は受難かもしれないが、お客さんも点が入る試合を歓迎しているはず。ボールが飛ぶのは悪いことではないのだが、これだけ劇的に様変わりすると、そもそも「統一球」とは何のために導入したのか。その存在意義が問われてくる。サッカーでは0-4のスコアを逆転するのは至難の業だが、野球はひと振りで4点も入る可能性があるスポーツ。だからこそ、ボールに関して、コロコロと傾向が変わるのは決していい状況ではないと思う。

 「統一球」導入の理由としては、世界基準に近づけるというのがお題目だったはず。しかし、現状は、メジャーのボールとも、WBCのボールとも違うものになっている。WBCのときも、「統一球」がプラスになったと感じたことは全くなかった。むしろ、「統一球」との違いに苦しんだのが実情だ。

 プロ野球があくまで「統一球」にこだわるなら、メジャー使用球で一本化すべきだと、私は考える。日米共通の「統一球」になれば、「飛ぶ」「飛ばない」とか、ボールの違和感という問題もすべて解消し、選手は最高のパフォーマンスを見せることに集中できる。なぜNPBはそれをしないのか。(前WBCコーチ・高代 延博)

 ◆高代 延博(たかしろ・のぶひろ)1954年5月27日生まれ、58歳。奈良県出身。智弁学園-法大-東芝-日本ハム-広島。引退後は広島、日本ハム、ロッテ、中日、韓国ハンファ、オリックスでコーチ。WBCでは09年、13年と2大会連続でコーチを務めた。

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