【野球のツボ】プロでは当然…大阪桐蔭のあのプレー

[ 2013年4月4日 11:13 ]

<県岐阜商・大阪桐蔭>9回に本塁生還を狙った走者が捕手に体当たりするようなスライディングをし、守備妨害でアウトになった

 閉幕した選抜高校野球で、印象に残るプレーがあった。3回戦での県岐阜商と大阪桐蔭の対戦。大阪桐蔭は9回2死一、二塁からの中前打で二塁走者が本塁に突入。このときのクロスプレーでの出来事だった。好返球を受けた捕手は、ホームをブロックしながら、突入に対してミットを構えていた。これに対して、走者は体当たりで強行突破。ミットからボールがこぼれ落ちた。

 私はこの瞬間、走者のナイスプレーだと感じていた。回り込んだりしてタッチを避けることも出来ない状況なら、ぶつかっていくしかない。「大阪桐蔭はさすがに鍛えられている」とも思っていた。プロ野球なら、このプレーは当然セーフ。WBCに限らず、国際大会でも同様だ。顔面を狙ったわけでも、スパイクの歯を向けたわけでもない。セーフになるため、走者は最善の選択をしたと見ていた。

 だからこそ、球審の「アウト」のジャッジには最初、びっくりした。2月にアマ野球内規が改訂され、「野手がボールを明らかに保持している場合、走者は野手を避ける、あるいは減速するなどして野手との接触を回避しなければならない」と危険防止ルールが加えられたことは後で知った。くしくも大阪桐蔭の選手が昨年夏の高校野球の国際大会で、再三激しいタックルを受けて負傷したことが、改訂につながったということだが、プロ側の人間として、このルールは果たしてどうなのか、と思ってしまう。

 もし、アウトになった選手がプロ入りしてきたら、「あのプレーはナイスプレーだった。同じ状況になったら、迷わず当たれ」と指導するし、捕手の子がプロ入りしたら、「あの程度の当たりでボールを落とすな。ミットを右手で抑え込んで、何が何でもボールを離さないように練習しろ」と命じる。それがプロの世界だ。あのプレーを「ラフプレー」と見るプロ側の人間はいないと思う。

 個人的な意見だが、ルールは中学生からプロまで共通であることが望ましい。野球界全体のレベルアップのためにも、それは必要だ。高校や大学でも国際試合はある。このとき「日本では体当たり禁止だから」と言っても、対戦相手は「そうですか」と応じるはずはない。日本の野球が世界基準と違った方向に向かわなければいいのだが。(前WBCコーチ・高代 延博)

 ◆高代 延博(たかしろ・のぶひろ)1954年5月27日生まれ、58歳。奈良県出身。智弁学園-法大-東芝-日本ハム-広島。引退後は広島、日本ハム、ロッテ、中日、韓国ハンファ、オリックスでコーチ。WBCでは09年、13年と2大会連続でコーチを務めた。

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