雄星、苦難乗り越えプロ1勝「自分を褒めたい」

[ 2011年7月1日 06:00 ]

<オ・西>プロ入り初勝利のウイニングボールを手に、笑顔がこぼれる西武・菊池

パ・リーグ 西武6―2オリックス

(6月30日 京セラD)
 黄金左腕がついにプロ初白星だ!西武・菊池雄星投手(20)が30日、オリックス戦でプロ2度目の先発マウンドに上がり、5回0/3を2安打2失点に抑えて待望のプロ初勝利を手にした。プロデビュー戦となった6月12日の阪神戦(西武ドーム)では試合後に号泣。大きな期待を背負いながら結果を出せず、左肩痛などさまざまな苦難を乗り越えてきた左腕が、ようやくプロの投手としての第一歩をしるした。

 その目に涙はなかった。プロ2戦目の先発で初勝利。菊池は喜びを胸にしまいこんで、ヒーローインタビューに臨んだ。

 菊池「まだ実感が湧かないです。去年はケガをしたり、いろいろなことがあって…。監督やコーチからは温かい言葉を掛けていただいて、チームメートからも“小さいことは気にせずに野球に集中しろ”と言われていた。少しは恩返しになったのかなと思います」

 プロデビュー戦となった6月12日阪神戦(西武ドーム)は、3回途中4失点KO。試合後、自然と大粒の涙がこぼれた。その夜。スポーツニュースを見ていると、元楽天監督の野村克也氏の辛口な言葉が耳に飛び込んできた。「ああ、この顔は一睡もできなかった感じですね。はっきり言って二流の投手」。プロは結果が全て――。初登板前日、実は9時間の睡眠を取っていた。「このままでは終わらないですよ。見ていてください!」。強い決意を胸に、2軍での再出発を切った。

 4番打者で感じたプロの壁は、4番打者で乗り越えた。前回、阪神・新井に浴びた安打。「内角高めの直球で、思い切り投げた球が構えたコースにいった。でも、打球は内野の頭を越えた。自分の力が足りないことを実感したんです」。この日の標的はT―岡田。2回、先頭で打席に迎えた。2球目、142キロの内角直球。力ない中飛に仕留めた。

 「がむしゃらに投げれば振ってくるという思いもありました」と納得の表情だ。

 初勝利。その裏には渡辺監督との強い絆があった。1軍登板がないまま迎えた、昨年の秋季練習。西武第2球場横、室内練習場のウエート室で指揮官と約30分間、じっくりと語り合った。「ゆっくりやっていこうな。焦らないでいいから」――。左肩痛で満足に投げられなかった1年。この言葉で、気持ちを今季に向けた。その渡辺監督は言う。「俺には雄星を引き当てた責任がある」。リーグ優勝を逃し、昨オフはチームを去ることも頭をよぎったという。それでも菊池を育てる道半ばでユニホームは脱げなかった。プロ初勝利を見届け「しっかりゲームをつくってくれた」と称えた。

 「きょうは自分を褒めたい。あしたになったら忘れて、2勝目に向かってしっかり練習していきたい。(記念球は)両親も喜ぶが、一番待っていた(母校・花巻東の佐々木洋)監督に贈りたい」。甲子園で155キロを計測しセンバツ準優勝。ドラフトでは6球団が競合し、世間の注目を浴びた。昨年は故障に苦しんだ。さまざまな出来事を乗り越え、菊池雄星がプロの世界で、勝った。 

 ▼オリックス・田口(2打数無安打)いい球を投げていた。いいリズムでテンポで投げられた。対戦していて気持ちのいい投手。一生懸命さも伝わってくるし、すがすがしい。

 ▼オリックス・坂口(2打数無安打) 腕が振れていた。

 ▼オリックス・正田打撃コーチ 荒れ球というか。打者もそんな感じやったと思う。スライダーは低めに決まっていた。ただ、しっかり腕は振っていた。

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