祈りの2K開幕!斎藤“前を向こう”と全力投球

[ 2011年4月2日 06:00 ]

試合前のセレモニーで、東日本大震災の犠牲者に黙とうするブルワーズの斎藤(中央)ら

ブルワーズ6―7レッズ

 大リーグは31日(日本時間4月1日)、2011年シーズンが開幕。東日本大震災で家族や友人が被災したブルワーズの斎藤隆投手(41)が日本選手の先陣を切ってレッズ戦に登板し、1回を2安打無失点2奪三振で新天地デビューを飾った。41歳でメジャーのマウンドに立つのは日本人では初。チームは逆転サヨナラ負けを喫したが、次々に最年長記録を塗り替えている右腕は故郷への強い思いも背負って、投げ続ける。
【試合結果】

 ブルペンから出ると、斎藤は祈るようにグラブと右手を合わせた。3点リードの8回。先頭ゴメスをスライダーで空振り三振に仕留める。その後、連打を浴びて一、二塁のピンチを招いたが、代打カイロにはこの日最速となる91マイル(約146キロ)の外角低め直球で空振り三振。最後は4回に本塁打を放っている1番スタブスを一邪飛に打ち取った。魂の18球だった。

 しかし、9回に守護神アクスフォードが3点リードを守れず、最後はヘルナンデスに逆転サヨナラ3ランを浴びて敗戦。セットアッパーとしての役割を果たした斎藤も、静まりかえるクラブハウスで大きく息をついた。

 「若いチームなので、ああいうゲームを取っていかないと、という思いが強い。あした(1日)は休みなので、気持ちを切り替えたい」。日本人投手で41歳でマウンドに立つのも、ホールドをマークしたのも最年長記録。自らの熱投は勝利に結びつかなかったが、今季はさまざまな思いを背負って戦い抜く覚悟だ。

 新たなチームで迎えるメジャー6年目。「複雑な開幕」と言った。仙台市出身の右腕は、東日本大震災で両親ら家族や友人が被災した。遠く離れた母国の深刻な状況をテレビで見ることしかできない。米国で何の不自由なく生活している自分と、被災地のために何もできない自分。無力さを感じ、一時は帰国することも考えた。しかし、連絡がつながった両親から「私たちは大丈夫だから」と諭され「自分は野球をすることでしか前に進めない。それが現実」と言い聞かせた。この日の試合後も「マウンドでは一切考えない。精いっぱい相手に立ち向かっていく私の姿を見て何か感じてもらえるなら」と語った。控えめな言葉に被災者への強い思いがのぞく。

 多くの仲間もついている。敵地にもかかわらず、試合前のセレモニーでは両軍がグラウンドに整列し、昨年亡くなった名将スパーキー・アンダーソン氏とともに、日本の犠牲者に黙とうをささげた。帽子を左胸に当てて祈った斎藤は「(レッズは)日本人プレーヤーがいるわけでもないのに、(黙とうを)やってもらえた。米国は本当に意識が高い」。4月4日(同5日)の本拠地開幕ブレーブス戦では、球団を挙げて義援金を募る。

 「何かをしようとする気持ちが出れば、前を向けるようになると思う」。それは、若いチームへの思いと同時に、日本で不安と戦う人へ、祈るような気持ちが込められた言葉に聞こえた。

 ≪日本人最年長でのメジャー登板≫斎藤は昨季、高橋建(メッツ)を上回る日本人最年長でのメジャー登板を果たし、この日のマウンドで初の41歳シーズン登板となった。勝利、セーブでも最年長記録をマークしており、さらなる更新に期待が懸かる。ちなみに先発での最年長勝利は02年エクスポズ(現ナショナルズ)の吉井理人で37歳123日。

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