「口蹄疫」復興の願い込めた全力始球式

[ 2010年8月8日 06:00 ]

始球式役を務めた高鍋農・田村主将は、投球を前に、ボールを手に目を閉じる

 【夏の1ページ】天を仰ぎ、ボールを見つめた。甲子園のマウンドに立って思い描いたのは、苦しむ畜産農家の人々の顔だった。「早く明るい宮崎を取り戻してほしい」。始球式に臨んだ宮崎の高鍋農・田村栄二主将(17)は復興の願いをボールに込めた。

 今年4月に発生した家畜伝染病「口蹄疫」は宮崎に甚大な被害をもたらした。県内で殺処分された牛や豚は約30万頭。畜産科のある高鍋農も例外ではなかった。5月23日に感染の疑いのある牛が見つかり、2日後、グラウンド横の畜舎から334頭もの牛と豚の鳴き声が消えた。生徒のショックは大きく、立野野球部長は「家族を亡くしたようだった」という。
 田村主将は園芸科ながら復興への思いは変わらない。終息宣言が出るのは最短で今月27日だ。ゼロからの再興となる畜産農家を思うと、投球に力が入った。口蹄疫の影響で6日遅れで開幕した宮崎大会1回戦で敗れた(1―6小林)ときは無観客試合。この日は観衆3万9000人が見守っていたが「全力プレーで畜産農家の方々に勇気を与えようという気持ちは同じでした」。全力投球はワンバウンド。万雷の拍手は田村主将の姿が見えなくなるまで続いた。

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2010年8月8日のニュース