わずか11球…菊池「背中痛くて直球投げられなかった」

[ 2009年8月23日 17:54 ]

試合終了後、ベンチ前で痛そうな表情を見せ背中を押さえる花巻東・菊池雄

 【花巻東1-11中京大中京】まさに満身創痍だった。背番号1は試合終了の瞬間を涙を流しながらベンチで迎えた。投げられた球数はわずかに11。花巻東の菊池雄は「自分の力不足だった。信頼に応えられなかった」とむせび泣いた。

 菊池雄がマウンドに上がったのは0―3とされた四回2死満塁のピンチだった。背中の痛みが回復せずに、先発を回避。もう1点も与えられない状況で3番手で登板したが、呼吸をするだけで痛みが走る体には、相手の勢いを止める力は残っていなかった。
 本来の球威はなく、三塁打で3点を失った。五回にはスライダーを狙われて本塁打を浴び、そのままマウンドを退いた。「背中が痛くて直球が投げられなかった」
 佐々木監督から「申し訳ない」と声をかけられたが、エースは何も答えられず涙があふれた。試合前夜、ボールを握り締めながら左腕は祈っていたという。「神様、あしたは投げさせてください」。願いはとどかなかった。
 今春の選抜大会では準優勝した。東北勢として初優勝の期待を一身に背負ってきた。甲子園での左腕最速となる154キロをマークした夏が終わった。「チームが一つになって、岩手を背負って戦えた。最高の舞台だった」。かけがえのない宝物を胸にしまい、今夏のヒーローは聖地を去った。

続きを表示

2009年8月23日のニュース