始球式でスピード違反?上野由岐子に今も宿るアスリートとしての本能

[ 2023年10月24日 16:00 ]

駒沢球場で行われたソフトボール女子U15W杯での始球式。(左から)宇津木妙子・日本協会副会長、U15日本代表・橋本捕手、ビックカメラ高崎・上野由岐子投手、女子日本代表・宇津木麗華監督
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 「いやー、私、やらかしちゃったかもしれません」。久しぶりの再会となった駒沢球場で、41歳の上野由岐子は、18歳で初めて会ったときと同様、いたずらっぽい笑顔を浮かべていた。

 秋晴れ続きの都内では10月21日、第1回となるソフトボール女子のU―15W杯が開幕した。28年ロサンゼルス五輪で実施競技となったニュースも駆け巡り、実施時期には20歳となっている原石たちのプレーは輝きを増している。そんな大会で24日、始球式を務めたのが現役選手ながらレジェンドの上野だった。

 実際に見た駒沢球場での始球式は時速90キロに抑えられていたが、その2時間ほど前に世田谷区総合運動公園で行ったものは違ったらしい。ペルー―イタリア戦の始球式を、本人が苦笑いで振り返る。「軽く投げてくださいって言われて、軽く投げたつもりだったんですけど、キャッチャーが捕球できなくて…。周りの人には『110キロ出てた!』と冷やかされました。ヤバいっすね」

 おそらく決して本気のピッチングではなかっただろうが、15歳以下の選手には衝撃だったと思う。現在は上野にとってもシーズン真っ最中。だが、世界中のホープたちにホンモノを見せるという意味で、これほど有意義な始球式もなかったのではないだろうか。少し危ないけど。

 このW杯、投手陣の繰り出すボールは軽く100キロを超え、とても15歳以下とは思えない。ボールの規格が変わったとはいえ、私が最初に見た五輪、2000年シドニーで銀メダルを獲得した日本代表に、100キロを超えるボールを投げる投手は不在だった。29日に太田スタジアムで閉幕するまで、入場無料の大会を覗いてみるのも一興だ。

 そのプレーを見つめていた上野は「まだ体の使い方に無駄が多いっすね」とにやにやしていた。言葉には後輩たちへの温かい期待と同時に、自身のアスリートとしての熱が宿っているようだった。

 「もう目標ではありえないですけど、ロサンゼルスって、あと5年しかないんですよね」

 その言葉の真意は聞きそびれた。だが、個人的には「もしかしたら…」の気持ちがむくむくと湧き上がった一日だった。(首藤 昌史)

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