桐生不発9秒台どころか優勝も逃す 集中高まらず

[ 2015年4月20日 05:30 ]

男子100mで2位に終わった桐生は苦笑い

織田記念国際陸上最終日

(4月19日 エディオンスタジアム広島)
 日本短距離界の悲願成就は持ち越しだ。男子100メートルで日本初の公認9秒台の期待が懸かった桐生祥秀(19=東洋大)は向かい風0・1メートルの予選1組で10秒36のトップ、冷たい雨と向かい風0・2メートルの決勝では10秒40の2位タイに終わった。集中を極限まで高められず、持ち味の中盤の加速も不発。ケンブリッジ飛鳥(21=日大)が10秒37で制した。

 本来の自分でないことは分かっていた。決勝で号砲とともに飛び出した桐生だが、スタートのやり直しを知らせるピストル音が鳴り響く。数メートル走って止まると、「体が重い。(スピードに)乗っていかない」と感じた。仕切り直しのレースでは中盤の爆発力もなく、10秒40でフィニッシュ。「練習へのモチベーションになった。トップを獲りたい気持ちがさらに増した」。日本初の公認9秒台どころか、13年6月の日本選手権で山県に勝たれて以来、この種目で日本人に敗れた。

 桐生には激走のサインがある。レース前、集中が高まると他人を寄せ付けないオーラを発する。昨年5月、10秒05をマークした時も、3月のテキサス・リレーで追い風参考ながら9秒87を出した時もそうだった。だが、この日は心のギアが上がりきらない。「リラックスしすぎて欲が足りなかった」と桐生が言えば、土江コーチも「(集中が)究極まで高まっていない」と説明した。

 エディオンスタジアム広島のトラックは硬く、反発力が強いといわれる。3位に終わった前日(18日)の200メートルも100メートルも、跳ねるような動きで前への推進力を欠いた。「やたらと体が上がった」と振り返ったが、収穫もある。もともと地面からの反発をうまくとらえる桐生は、オフの筋力トレーニングの成果でパワーアップ。「この競技場で跳ねるのは、脚力がついた証拠だと思う」と手応えを口にした。

 100メートルの次戦は5月10日のゴールデングランプリ(川崎)か、同14日開幕の関東学生対校選手権(横浜)だ。「痛いところがなく終わったのは、いいところ。どう考えようと、この大会は終わった。見ててもらえれば、自己ベストを出せる」。まだ4月。まだ19歳。夢にアタックするチャンスは、これから何度も訪れる。

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2015年4月20日のニュース