“かわいがり”で骨折 千代大龍因縁の日馬討ち

[ 2013年3月14日 06:00 ]

強烈な左のカチアゲから引き落としで日馬富士(左)を下した千代大龍

大相撲春場所4日目

(3月13日 ボディメーカーコロシアム)
 平幕・千代大龍が横綱・日馬富士を引き落としで破り、02年名古屋場所の霜鳥(後の霜鳳)以来の横綱初挑戦金星の快挙を成し遂げた。昨年春巡業のぶつかり稽古の際にケガを負わされた因縁の相手に快勝。これで1横綱2大関を破って3勝1敗とし、荒れる春場所を大いに面白くした。日馬富士は04年秋場所の朝青龍以来となる2日連続金星配給。横綱・白鵬は妙義龍を寄り切りで下し、ただ一人4連勝とした。

 怖いもの知らずという言葉は千代大龍のためにある。日馬富士を相手に強烈なかち上げをさく裂させ、完全に相手の体を浮き上がらせてから得意の引き落とし。「うれしかった。勝っちゃったんだ」。出世が早くて大銀杏(いちょう)も結えないちょんまげ頭は土俵上で軽く両手でガッツポーズ。師匠の九重親方(元横綱・千代の富士)から「かち上げろ。突いて出てからの引きについては何も言わない」とのアドバイス通り、ぶれることなく自分を貫いて横綱戦初挑戦初金星をつかみ取った。

 日体大4年時に学生横綱となって2年前の5月に幕下15枚目格付け出しデビュー。所要6場所で新入幕を果たすまでは順調だったが、苦難の道はそこからだった。新入幕を決定的にしていた昨年4月の小浜巡業。当時大関だった日馬富士にぶつかり稽古で指名され、まさに鬼のような“かわいがり”に遭った。「地獄絵図でした」。その結果、右足関節剥離骨折と診断されて帰京。続く夏場所には強行出場したが、途中休場となり、出世は遅れた。

 さらには昨夏に糖尿病を患っていることが判明。通常120を超えると異常とされる血糖値は480を示した。以来、水を一日4リットル飲むことを義務づけられ、丼で一日7杯食べていた白米も1杯だけに抑制。魚や温野菜を摂取する食事療法や、大好きな肉も脂のない赤身だけしか食べられず「とにかく我慢でしたね」。そんな節制生活を続けて血糖値を108まで戻し、ようやく上位に挑戦できる位置まで番付を上げた。

 横綱に勝てば次の巡業で再び“かわいがり”が待っている可能性が高いが、この日の朝稽古後には「びびる意味が分からない。巡業でかわいがられるのは10分ぐらい。それよりも金星を取る」と言い切った。そんな強心臓ぶりが、春場所の台風の目となった24歳の強みである。

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2013年3月14日のニュース