オジュウ引退後の障害界 石神が考える発展への課題とは

[ 2023年8月2日 10:15 ]

引退式で記念撮影に納まるオジュウチョウサンと石神、管理する和田正師(右端)、長山オーナー(右から2人目)
Photo By スポニチ

 ▼日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は東京本社の鈴木悠貴(32)が担当する。今回のテーマは障害競走の発展。オジュウチョウサンの主戦騎手として名をはせた石神深一(41)に話を聞いた。

 オジュウチョウサンの活躍によって栄華を極めた障害界。それでも「まだまだ課題は多い」と冷静に分析するのは、絶対王者の主戦ジョッキー石神だ。「オジュウが引退してまだ半年くらいですけど、人気に陰りが見えているのは実感しています。業界発展のためにはオジュウのようなスーパーホースの存在が大きいと思いますが、そう簡単に生まれないですからね。僕たちがやらなければいけないことはたくさんあると思います」。

 まず力を入れるべきだと石神が話すのは障害騎手のメディア露出。重賞、特別戦を除き午前中の1、4Rに組まれることが多く、地上波で放送されることの少ない障害戦。どのようなレースなのかを知ってもらうことが第一だ。「平地に比べて見てもらえる機会が圧倒的に少ない。テレビなどでどんどん障害戦の面白さを発信していかなければなりません。可能ならばYouTubeを始めるのもありだと思います」。7月4日放送のグリーンチャンネル「競馬ブロス」に石神が出演した際には、障害戦に合う平地実績馬として今年のダービー3着ハーツコンチェルトを挙げるなど番組を盛り上げアピール。「今回は僕が出ましたけど毎週、障害ジョッキーを出演させていただけるとありがたいですね」と継続的な出演を懇願した。

 認知度を上げた上で重要なのはレースレベルの向上。そのためには障害騎手育成が不可欠だと石神は語る。「興味を持って見てもらっても面白いレースでなければ意味がありません。乗り役を増やして競争を激化させていくべきです」。近年、平地重賞の賞金を上げていく流れがある中で障害重賞は減額傾向。障害界の有馬記念とも言われる中山大障害の1着賞金は15年前に比べ1400万円も下がっている。その影響もあって障害騎手は年々減少。今年、障害レースに騎乗した騎手は26人。10年前に比べ7人も減っている。

 「何とか若手ジョッキーにも乗ってもらいたい」。その思いで石神が師匠となって教えているのがデビュー2年目の水沼元輝。騎乗機会を求めて今年から障害戦に本格参戦。平地との二刀流に挑戦している。「障害戦において減量はかなり効くので好成績を残しやすいはず。馬主さんも騎乗依頼しやすいんじゃないかな。若い人が頑張ってくれると注目が集まるし、勝てるなら俺も乗ってみようと思ってくれる騎手が増えるかもしれない。希望の星です。自分が持っている引き出しは全部教えてあげたいですね」と“インフルエンサー”としても期待は高い。

 取材を終えると「いつも取り上げてくださり、ありがとうございます」と会釈をした石神。障害界第一人者の思いが結実すると願いたい。

 ◇石神 深一(いしがみ・しんいち)1982年(昭57)6月3日生まれ、茨城県出身の41歳。父・富士雄さんは元JRA騎手(92年引退)。01年3月デビュー。同31日の中山3Rライデンノハナで初勝利。07年から障害騎乗を増やし、13年新潟ジャンプS(アサティスボーイ)で重賞初制覇。JRA通算3802戦190勝、うち障害1113戦113勝。重賞は全て障害で23勝。

 ◇鈴木 悠貴(すずき・ゆうき)1991年(平3)4月17日生まれ、埼玉県出身の32歳。千葉大学法経学部を卒業後14年にスポニチ入社。今年1月から競馬担当。

続きを表示

この記事のフォト

「2024 NHKマイルC」特集記事

「京都新聞杯」特集記事

2023年8月2日のニュース