【追憶のマイルCS】「荒れない」神話崩壊の95年 トロットサンダー稲妻差し、馬連10万超の大波乱に

[ 2022年11月16日 07:00 ]

95年のマイルCSを制したトロットサンダー(手前)
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 当時、マイルCSは「荒れないG1」の代名詞。84年に創設されて、ニホンピロウイナーが翌85年も合わせて連覇。いずれも1番人気だった。10番人気パッシングショットが勝った年(90年)もあったが、その年も1番人気バンブーメモリーは2着。84~94年の11回で1番人気は7勝、2着4回の連対率100%。そうした代名詞が付くのも自然だった。

 95年のマイルCSはG1馬が2頭…といっても、レガシーワールドはスランプ、マーベラスクラウンは故障明け2戦目でやはり本調子にない。現代の目から見れば混戦の一語に尽きるが、当時はセントウルSを勝ってここに臨んだビコーペガサスで行けるだろう…というムードが漂っていた。単勝2.9倍(支持率27.1%)。前年スプリンターズS2着、同マイルCS5着とはいえ、マイル未勝利馬に随分と人気が集まったものだが、理由がある。鞍上の武豊がレース翌日の20日、結婚披露宴を控えていた。この年も春に安田記念ハートレイク→オークス・ダンスパートナーでG1を2勝。押しも押されもせぬNo・1騎手が、ひのき舞台の前日、1番人気安定のG1なら何とかする…という期待。

 そんな期待を打ち破ったのが野武士トロットサンダー。南関東浦和で3歳7月と遅いデビュー。骨折で1年以上の休養を挟んで、JRAに移籍したのは5歳夏。900万級(現2勝クラス)からキャリアアップした遅咲きの馬だ。

 「そんなに人気(4番人気、単勝8・5倍)もなかったからリラックスして乗れた」と鞍上の横山典。前半は中団やや後ろの位置取り。「あまりリズムは良くなかった。僕の腕じゃなくて、馬が勝手に走ってくれた」という。

 淀の坂を下っていく際、トロットサンダーは闘志をみなぎらせて自らハミを取っていく。横山典は前の空いている直線外に向けて巧妙に誘導した。

 「いつもいい脚を使うが、とびきり切れたね。負ける時は脚を余していたが、今日はゴールが遠くに見えた。それも良かったかな」

 豪快な伸びでぐんぐん抜き去り、最後に逃げ粘るヒシアケボノをかわして、しぶとく食い下がるメイショウテゾロも封じた。1番人気ビコーペガサスは内枠があだになり終始外から押し込まれる形になって、追い出しのタイミングが遅れて4着まで。武豊は「よく走っていますが、外の馬をいったん行かせないといけなかった。枠の差かな」と敗因を語った。マイルCSの1番人気パーフェクト連対神話はこの年でピリオド。2着メイショウテゾロが16番人気の伏兵だったため、馬連は10万4390円。92年阪神3歳牝馬S(勝ち馬スエヒロジョウオー、馬連12万740円)に次ぐ当時G1史上2番目の高配当決着となった。

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2022年11月16日のニュース