【エリザベス女王杯】ソフトフルート95点!全身が全集中、気迫ある立ち姿

[ 2020年11月10日 05:30 ]

全集中した立ち姿のソフトフルート
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 鬼滅のダークホースが混戦を一刀両断!!鈴木康弘元調教師(76)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第45回エリザベス女王杯(15日、阪神)では伏兵ソフトフルートをラッキーライラック、ノームコアのG1ホースと共にトップ指名した。達眼が捉えたのは大ヒットアニメ「鬼滅の刃」の必殺技“全集中の呼吸”をイメージさせる立ち姿と女剣士さながらの柔軟な筋肉、鬼滅の木の実のような黒光りした毛ヅヤだ。 

 11月の声を聞くと、黒く熟す果実があります。直径7~8ミリ、小粒のブルーベリーよりも小さい榊(さかき)の実。「木ヘンに神」の字面通り、神にささげる木として神社に植えられたり神棚に飾られたりしますが、古来、魔よけや鬼退治、疫病封じにも用いられてきました。和歌山県北部に位置する鳴川神社の「鬼もみ」。榊を手にした若者が鬼の面をかぶった者を捕らえ、無病息災を祈る伝統行事です。“日本一慈(やさ)しい鬼退治”とはコロナ禍で大ヒットしている「鬼滅の刃」のキャッチコピー。鬼退治に用いる榊は鬼滅の木ともいえます。

 英語で果実(ソフトフルート)と命名された黒鹿毛も、晩秋を迎えて榊の実のように黒光りしています。出産という大仕事が待っている牝馬はこの季節になると、体を冷やさないように冬毛を伸ばし始める傾向がある。エリザベス女王杯出走予定馬の中ではサラキア、ウインマリリンの冬毛が目立ちます。ところが、この鬼滅の木の果実には冬毛1本見当たらない。新陳代謝が優れているのでしょう。

 その顔立ちにも少々驚かされます。カミソリのような鋭利なまなざし、刃の切っ先のように鋭く立てた耳、とがった鼻孔を全て一点に向けている。素晴らしい集中力。尾を少し上げながら前肢に体重を乗せる立ち方も集中心を示しています。菅首相が国会答弁で引き合いに出した「全集中の呼吸」(「鬼滅の刃」の必殺技)を体現する立ち姿。歴戦のG1馬にも立ち向かえる気迫を感じさせます。

 ディープインパクト産駒らしい、しなやかな体つき。筋肉量は目立ちませんが、滑らかに傾斜した肩やトモに柔軟な筋肉をバランスよく付けています。「鬼滅の刃」の柱と呼ばれる剣士に例えれば、変異刀を新体操のリボンのように扱う女剣士(甘露寺蜜璃)の柔らかな肉体です。

 11月に黒く熟す果実。晩熟の実をつける鬼滅の木はG1に波乱を起こす柱になるかもしれません。 (NHK解説者)

 ◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の76歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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