【ヴィクトリアM】アーモンド100点!美空ひばり「川の流れのように」しなやかなトモと肩

[ 2020年5月12日 05:30 ]

鈴木康弘「達眼」馬体診断

ヴィクトリアMでG1・7勝目を目指すアーモンドアイ。“達眼”こと鈴木康弘氏は馬体診断で100点満点の評価
Photo By 代表撮影

 古牝馬の頂点に君臨するのは川の流れのように穏やかな女王だ。G1馬体診断でおなじみの鈴木康弘元調教師(76)が「達眼・特別編」でヴィクトリアマイル(17日、東京)の有力候補をボディーチェック。現役最多のG1・6勝馬アーモンドアイをラヴズオンリーユーと共に満点採点した。達眼が捉えたのは“歌の女王”美空ひばりさんが生前最後に発表したシングル作品を思い起こさせる姿。コロナ禍による無観客の舞台でもターフの女王がヒロインを演じる。 ヴィクトリアM

 昨年の有馬記念で一敗地にまみれても女王アーモンドアイの体には泥も傷もついていません。しなやかなトモと肩、フックラと張りに満ちた腹周り、春の暖かい日差しを浴びてまぶしく光る毛ヅヤ。女王の輝きは失われていない。立ち姿を見れば、心地良さそうに尾を流し、耳をしっかり前へ立てながら大地をつかんでいます。アーモンド形の聡明(そうめい)で愛くるしい目はとても穏やか。まるで四万十川(高知県)のゆるやかな清流のせせらぎに耳を傾けながら川岸にたたずんでいるかのような姿です。

♪おだやかにこの身をまかせていたい…。

 美空ひばりさんの名曲「川の流れのように」(作詞・秋元康)の歌声が耳元によみがえってきます。

 昨年の安田記念では発馬直後に進路をふさがれて大きく遅れる不利があった。3月のドバイ遠征では現地に渡りながらコロナ禍で開催中止。

♪でこぼこ道や曲がりくねった道…。

 ターフの女王の蹄跡も真っすぐではありませんが、

♪知らず知らず歩いて来た。

 歌の女王の熱唱を蹄音で伴奏するように…。

 女王花の凜(りん)とした咲きっぷり。必要な部位にバランスよく付けた筋肉は、にわかに立て直したものではありません。にわか仕立ては筋肉に偏りが生じる。これまでと変わらずに鍛え抜いてきた果実です。馬体を見るまで女王花はしぼんでいるのではないか、と懸念していたが、杞憂(きゆう)に終わりました。「あなたに会えてよかった」(歌、作詞・小泉今日子)のフレーズがストンと胸に落ちます。

♪遠い空に輝く星のように あなたはずっとそのままで変わらないで…。

 でも、変わった点が一つだけある。両前蹄の上には「ワンコ」と呼ばれるおわん状のプロテクター。強く踏み込んだ後肢と前肢の追突を防ぐワンコ装着は3歳秋以来です。後肢の踏み込みが再び強くなったのでしょう。コロナ禍のため無観客の舞台に立つのは生涯初めて。女王らしく穏やかにゲートインを迎えられるでしょう。

♪ああ 川の流れのように 移りゆく季節 雪どけを待ちながら…。(NHK解説者)

 ▽美空ひばりさんの不死鳥伝説 46年に9歳でデビュー、子役時代から非凡な才能を発揮。その後も国民的歌手として長く活躍していたが、86年4月に公演先で体調不良を訴えて入院。約3カ月半にわたる治療を余儀な くされた。体調が不完全なまま、88年4月11日に東京ドームのこけら落としとなるコンサートを敢行。“不死鳥”をイメージした衣装は全国のファンに強烈な印象を残した。

 ▽小泉今日子の軌跡 82年3月に歌手デビュー。紅白に出場するなどトップアイドルとしての地位を築いていったが、女優としての才能も発揮。13年にNHKで放送された朝の連続テレビ小説「あまちゃん」の出演も大きな話題となった。

 ◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の76歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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