【ヴィクトリアM】オンリーユー100点!イルカ「なごり雪」歌詞と同じ見違えた馬体

[ 2020年5月12日 05:30 ]

鈴木康弘「達眼」馬体診断

<ヴィクトリアM>4歳春を迎え見違えるほど成長したラヴズオンリーユー
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 “♪去年よりずっときれいになった”。鈴木康弘元調教師がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。ヴィクトリアマイルでは昨年のオークス馬ラヴズオンリーユーをアーモンドアイと並んで1位に指名した。達眼が指摘したのは昭和のヒット曲「なごり雪」の有名なフレーズ。有力候補の馬体を昭和から平成、令和へ歌い継がれる名曲になぞらえて解説する。

 歌は世につれ、世は歌につれ…歌は時代の合わせ鏡だといいます。コロナ禍で先が見えない時代、歌で希望の光をと、有名無名の人々がステイホームで「上を向いて歩こう」を歌い継ぐ動画がネット配信されているとか。東京五輪の前年(63年)に坂本九さんが歌って大ヒットした名曲です。家ごもりが求められる日々。気晴らしの散歩ぐらいはせめて上を向いて歩こう。散歩する気分になれない雨の日も癒やしてくれるのは心に響く名曲です。

 自宅のテーブルに並べた馬体写真をチェックしながら、昭和、平成の歌謡名曲を聴いていると…。私が調教師試験を受験した当時の懐かしい歌声が流れてきました。♪汽車を待つ君の横で僕は…。かぐや姫のアルバム収録曲として発表され、イルカによるカバーバージョンが大ヒットした「なごり雪」(作詞・伊勢正三)。歌詞のリフレイン(畳句)は、ラヴズオンリーユーの姿を半年ぶりに見た印象と同じでした。♪今春が来て君はきれいになった。去年よりずっときれいになった。

 4歳春を迎えた鹿毛の馬体は見違えるほど美しくなっていました。キ甲(首と背中の間のふくらみ)が抜けてきたことで首から背中にかけて深みのある流線形のラインを描き、深いトモと見事に調和しています。そんな美しい骨格を1マイル対応も可能な柔らくて繊細な筋肉が包んでいます。全兄リアルスティールは屈強な筋肉の塊でしたが、妹は美しさと繊細さも併せ持つ肢体。キ甲の発達と歩調を合わせて滑らかに傾斜した肩には張りが増してきた。♪時がゆけば幼い君も大人になると気づかないまま…。茶色い光沢を放つ毛ヅヤとともに肩のボリュームがまぶしく目に飛び込んできます。

 かぐや姫やイルカを知らない若い世代には今井美樹の「瞳がほほえむから」(作詞・岩里祐穂)になぞらえておきます。♪歩き出す肩にとまる光が…。馬は坂本九さんに呼びかけられても上を向いて歩けません。でも、前を向いて歩きだせば、肩に止まる成長という希望の光がタフなストライドを生み出してくれる。両前のつなぎは立ち気味ですが、昨年のエリザベス女王杯時に着けていた右前のエクイロックス(接着装蹄)は外してきた。蹄も丈夫になったのでしょう。両トモを流した立ち方は相変わらずですが、ハミ代わりのモグシ(簡易頭絡)を従順に受けています。目も穏やか。♪ふたつの瞳に言葉はいらないの…。穏やかな目が無言のうちに心のゆとりを伝えています。

 「みんなへの愛を込めて」(ラヴズオンリーユー)と名付けられた流麗な4歳牝馬はステイホームの競馬ファンにとって癒やし。馬は世につれ、世は馬につれ。コロナ禍で先が見えない時代に愛の光を放つターフの歌姫です。

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2020年5月12日のニュース