アタラクシア 競走馬生活実働半年も15年に及ぶ乗馬の仕事

[ 2016年8月9日 10:28 ]

子供を乗せて元気よく歩くアタラクシア

 実働期間はわずか半年足らず。重賞にも手が届かなかった。それでも十分にインパクトを残した競走馬生活だったのではないか。名種牡馬デインヒルが日本でけい養された唯一の年である96年の種付けによって産まれたアタラクシア。00年ダービー(3着)を最後に脚部不安で現役を退いてからは、栗東トレセンの乗馬苑で“第二の仕事”に従事している。乗馬苑のチーフを務める大谷高司さん(50)に近況を聞いた。

 「上級の障害を飛ぶことはありませんが、初心者向けに頑張ってもらっています。脚元が悪くて引退した馬ですからね。障害を飛んで着地する時、脚には大きな負担がかかりますし、障害を飛ぶといった方向の乗馬にはしなかったのだと思います」

 取材に訪れた時は仕事を終えての休憩中だったこともあってか、周りに人がいても、顔をなでられても、我関せずといった雰囲気。なるほど、これなら初心者が乗っても大丈夫そうだ。

 「おとなしい性格で乗馬向きですね。月曜日以外は毎日、人を乗せていますよ」

 01年10月の現役引退後、すぐに乗馬苑に移ってきて15年がたとうとしている。来年で20歳。さすがに背中は落ちており、デインヒル産駒らしい肉厚だったボディーもアバラがうっすらと見えるぐらいに筋肉が落ちつつある。「もう少し頑張ってもらって、その後はのんびりとさせてあげたいですね」と大谷さん。舞台は替われども、20年近くに渡って黙々と仕事を全うしてきたアタラクシア。そのご褒美として、ゆっくりと余生を過ごしてほしい。

 ◆アタラクシア(セン19)1997年(平9)2月23日生まれ。父デインヒル、母ランバダスタイル。生産者は北海道浦河町の丸幸小林牧場。現役時代は池江泰郎厩舎の所属で7戦3勝。3戦目の未勝利を勝ち上がると、あすなろ賞、すみれSと3連勝。勢いに乗って挑んだ皐月賞では4番人気の支持を受けたが、先団から失速して9着。続くダービーでは1着アグネスフライト、2着エアシャカールに続く3着と健闘した。この一戦がラストランとなった。

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2016年8月9日のニュース