山口厩務員「何よりも無事に」娘を嫁に出す父親の心境

[ 2011年12月20日 09:00 ]

<有馬記念>ブエナビスタの強さは大人の安定感だと語る山口厩務員

とことんBuena 第1回

 有馬記念でターフを去るブエナビスタ。6回にわたり歴史的名牝の隠れたエピソードと真実に迫る。

 「出来過ぎだよ」と山口慶次厩務員。11日の阪神JFでジョワドヴィーヴルが衝撃V。姉の引退が近づいていることを知るはずもないが“これからは私に任せて!!”と言わんばかりの勝利。現在、この姉妹を共に担当する山口厩務員。兄のアドマイヤジャパン、アドマイヤオーラを含め、母ビワハイジの一族はこれまで4頭を担当。もちろん、どの馬にも思い入れがある。「ジャパンは人間を遠ざけるところがあったね。オーラは近づこうとするところも見えたけど…。牝馬の方がしっかりしているかな」と話す。

 姉妹の比較では「同じ2歳のこの時期、妹はまだ“お子ちゃま”。お姉ちゃんの方が大人だった」と3年前のブエナの記憶を遠い目で探った。これまで積み上げたG1は6勝。「これだけ安定して走る馬ってそういない。本当に凄い」。彼女が傑出しているのは馬体ではなく速さでもない。それはひたむきな走りへの集中力。決して我を失うことのない大人の安定感だ。

 ファンの期待の大きさは分かっている。「頑張らないとね。でも、何よりも無事に牧場に帰してあげたい」。まるで娘を嫁に出す父親のように見えた。別れの時は刻一刻と近づく。いつも通りに送り出す。それが腕利き厩務員からブエナへの最高のエールとなるはずだ。

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2011年12月20日のニュース