尾川 正真正銘の世界王者!17年奪取もドーピング違反で無効…2度目ベルトは幻じゃない

[ 2021年11月29日 05:30 ]

IBF世界スーパーフェザー級王座決定戦12回戦   ○同級3位・尾川堅一 判定 同級2位アジンガ・フジレ● ( 2021年11月27日    米ニューヨーク )

IBFスーパーフェザー級王座決定戦で、フジレ(左)を攻める尾川
Photo By ゲッティ=共同

 2度目の世界戦に臨んだ尾川堅一(33=帝拳)がアジンガ・フジレ(25=南アフリカ)に3―0で判定勝ちし、王座を獲得した。5回に強烈な右ストレートでダウンを奪うと、12回にも2度のダウンを奪い、ドーピング違反という“悪夢”で幻となったベルトを手にした。日本人ボクサーが米国で世界王座を獲得するのは2年ぶり7人目。11人の世界王者を輩出している名門・帝拳ジムで初のIBF王者となった。

 悪夢のような出来事も、この日のためにあったのかもしれない。リング上での勝利インタビュー。尾川は感極まって言葉を詰まらせた。

 「やっぱ4年前のファーマーとの試合で、子供たちにベルトをね。すみません…」

 17年12月に一度巻いたベルトは、想像もしていなかったドーピング違反で幻となった。意図的な摂取を否定し、塗り薬の誤検出という主張も認められず。失ったのはベルトだけではなかった。ボクサーの誇りを砕かれ「心が折れた」。1年間の資格停止処分中は収入も途絶え、貯金を取り崩した。「ボクシングをやめたかった」という尾川の背中を押したのは妻・梓さん(34)と3人の息子たちだった。

 19年2月に復帰し、再びたどり着いた世界戦の舞台。トランクスのベルトラインに息子たちの名前を入れ、尾川は磨き上げてきた右をサク裂させた。5回、フジレの右フックをかいくぐり、強烈な右ストレートを顎にヒットさせ、ダウンを奪う。ここでは仕留めきれなかったが、12回には右ショートで2度倒した。「練習してきた右ストレート。“クラッシュライト”です」と胸を張った。

 控室に戻ると、テレビ電話で家族に勝利を報告した。「リング上で子供たちの名前を呼べて良かった。生配信で見ていたので。苦労をかけたし、悲しい思いもさせたけど、世界一のパパを見せられた」。手にしたのは4年前と同じIBFの赤いベルト。「結果で恩返しする」と言い続け、約束を果たした。今後は米国で闘う道も開けた。尾川は「次はどこがいいかな。ベガスですかね」と笑った。

 ▽尾川の幻の世界王座 17年12月9日、米ラスベガスで行われたIBF世界スーパーフェザー級王座決定戦で尾川はテビン・ファーマー(米国)に2―1で判定勝ちして新王者に。ところが、試合4日前実施のドーピング検査で尾川の尿サンプルが禁止薬物の陽性反応を示していたことを18年1月19日にネバダ州アスレチック・コミッションが明かし、4月18日に試合結果を「無効試合」に訂正。尾川の王座獲得も無効となった。同コミッションは尾川に6カ月の資格停止処分を科し、日本ボクシングコミッションは17年12月10日にさかのぼって1年間のライセンス停止処分を科した。

 ◇尾川 堅一(おがわ・けんいち)1988年(昭63)2月1日生まれ、愛知県豊橋市出身の33歳。2歳の時に父・雅一さんが営む道場で日本拳法を始め小学生全国大会で優勝。桜丘高から明大に進学してインカレ団体戦3連覇、個人戦4位。明大卒業後にボクシングを始め、10年4月、プロデビュー。11年全日本スーパーフェザー級新人王でMVPに輝く。12年8月に5回TKO負けでプロ初黒星も、15年12月に内藤律樹を破り日本同級王座獲得(防衛5)。身長1メートル73、リーチ1メートル73の右ボクサーファイター。家族は妻・梓さんと3男。

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