薬師寺保栄氏“伝説の一戦”辰吉撃破から32年…注目の尚弥VS中谷は「6対4で井上有利」
WBC世界バンタム級タイトルマッチ12回戦 ○正規王者・薬師寺保栄 判定2ー0 暫定王者・辰吉丈一郎● ( 1994年12月4日 名古屋市総合体育館レインボーホール )
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【世紀の日本人対決を語る(1)】ボクシングの日本人同士による世界戦は、1967年(昭42)の沼田義明VS小林弘を皮切りに多くの名勝負を生んできた。5日後に迫った井上尚弥VS中谷潤人の東京ドーム決戦。過去に名勝負を繰り広げたボクサーは、いかに戦い、何を手に入れ、今回の対決をどう読むのか。連載の第1回は、薬師寺保栄氏(57)が、辰吉丈一郎氏(55)との「世紀の一戦」を振り返る。
名古屋市内でボクシングジムの会長を務める薬師寺氏は、32年前の辰吉氏との激闘を振り返って、こう話した。
「いまだに、あの試合のファイトマネーが入ってきてますよ」
ジム経営、講演などの仕事、スポンサー獲得、取材依頼。「あれに勝っていなかったら…というのが、時間がたつにつれて思うことですね」と笑った。
曲折を経て試合が決まり、両陣営の激しい対立で、日に日に注目が高まった。左目網膜剥離が発覚した辰吉氏は、日本ボクシングコミッション(JBC)の内規でリングに上がれなかった。網膜剥離容認の国際基準との違いや「暫定王者」という耳慣れない言葉が、話題を呼んだ。
さらに、王者同士の対戦のため、両陣営が興行権を主張。メキシコのWBC本部で入札となり、ファイトマネー合計342万ドル(当時3億4200万円)の破格の落札額が、注目度に拍車をかけた。
落札したのは松田ジムと中継する中部日本放送(CBC)。大阪帝拳・帝拳と日本テレビが敗れた構図は、名古屋VS東京・大阪連合と重なり、試合は代理戦争の様相も呈して、さらに盛り上がった。
薬師寺氏は米ロサンゼルスで254ラウンドのスパーリングを敢行しており、騒動を知らなかったという。帰国は決戦2週間前。「有名人じゃんって、びっくりした」。そこから両者の舌戦や陣営の心理戦も加速し、異様な雰囲気で当日を迎えた。
「死ぬ覚悟をした」と薬師寺氏は振り返る。圧倒的不利の予想の中、作戦は辰吉氏の左目を狙う「アイ・オブ・ザ・タイガー」。さらに「倒れるときは、辰吉の左目に親指を突っ込んでやる。負けても道連れにする」とまで思い詰めたという。
ボクシングファンの枠を超えて注目を集めた世紀の一戦。重圧も得たものも、大きかった。薬師寺氏は井上VS中谷戦を「7対3に近い6対4で井上。経験値から、井上有利は否めない」と予想する。ただ「中谷くんも黙ってやられないでしょう。お互いダウンがあって判定、のような気がする」と話した。
「お互い駆け引きをすると思う。出方を見ながらだと後手に回ってしまう。中谷くんは相手に合わせるのではなく、自分のボクシングをしてほしい」。薬師寺氏は、速いジャブを丹念に突き、右ストレートを当てるボクシングを貫いて、世紀の一戦を制した。
▼初の日本人同士の団体内世界王座統一戦 1994年12月4日、名古屋市総合体育館レインボーホールで行われたWBC世界バンタム級王座統一戦。正規王者・薬師寺保栄(松田)と暫定王者・辰吉丈一郎(大阪帝拳)が対戦。WBCは左目網膜剥離のため正規王座を返上した辰吉を、手術、ハワイでの復帰戦を経て暫定王者に認定。その間に正規王者となった薬師寺に統一戦を義務づけた。JBCは「辰吉は負けたら引退」の条件で試合を認定。激しい打撃戦の末、4点差1人、1点差1人の2―0の判定で薬師寺が勝ち、3度目の防衛に成功した。
≪2人のゆかりの地で応援企画 座間市VS相模原市“前哨戦”≫世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)と中谷潤人(M・T)が激突する5月2日の東京ドーム決戦の応援企画として、26日に相模原市内で「市境チャレンジフェス」が開催された。井上尚の出身地・座間市と、中谷が在住している相模原市の共催で実現。両市民100人(各50人)が大縄跳びなどで競い合った。試合直前で選手は不参加も両市長も参加。「ボクシングゲーム対決」で前哨戦を制した相模原市・本村市長は「最高の舞台で最高の試合を期待している」とエール。中谷が勝利した場合は、大規模な凱旋報告会も計画していると明かした。
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