元日本拳法王者のボクサー前田稔輝が夢見る未来 モンスター井上と「手合わせしてみたい」
飛躍の時を待ちながら爪を研ぐプロボクサーがいる。関西のホープ、フェザー級の前田稔輝(24=グリーンツダ)だ。4月の試合結果を受けて作成されるランキングから日本タイトルに挑戦可能な12位に入った。それ以前の17位から一気に上昇し「早くタイトル挑戦できるようにしたい」と声がはずむ。ただ、本石昌也会長は大きな期待を寄せるからこそ時機を見極める構え。「今はいろんなタイプと対戦してキャリアを積む段階。(日本や東洋太平洋など)タイトルを獲れば、すぐに次のステージ(世界挑戦)が見えるようにしたい」。早く晴れ舞台へ送り出したい気持ちはあるものの、今は力を蓄えるべきと自らに言い聞かせるような口ぶりだった。
タイトル挑戦を急がない方針には、ランク的に悩ましい位置にいることも関係している。上位ランカーの立場で考えれば、12位の若手有望株はリスクに見合うランク上昇のメリットを得にくい相手。敬遠されるのも無理はない。コロナ下で外国籍選手の招へいが難しいため、国内選手同士の生き残りバトルが繰り広げられている。この状況が追い風となり、「僕はいつでも誰とでもやります」と言う前田に好機が訪れるのを待つしかない。
来月23日に開幕する東京五輪で前田が注目するのは「もちろんボクシング。柔道も楽しみ。同じ武道をやっていましたから」。小1から日本拳法を始め、大商大まで全国制覇は通算10度。大商大堺高3年で既に「大学でタイトルを獲ってボクシングに転向するビジョンはありました」と言う。大商大2年時に全日本学生選手権で優勝。19年4月にプロデビューし、同年のフェザー級新人王に輝き、ここまで7戦全勝(4KO)。高校時代に描いたプラン通りに歩んできた。それでもボクサーとして成長を続ける自分の根っこの部分には日本拳法があり、武道には親近感を抱くという。
先日、米ラスベガスで防衛成功したWBAスーパー&IBFバンタム級統一王者・井上尚弥(大橋)の試合も興味深く観戦した。「打たせずに打つ。ボクシングの究極ですよね」と感嘆しながら「一度、スパーリングで手合わせしてみたい。映像で見ていますけど、実際に自分の技術がどこまで通用するのか」。前田のフェザー級はリミット57・1キロで、井上のバンタム級は同53・5キロ。将来的に井上が階級アップすればリングで拳を交える機会も…つい想像してしまう。
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