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凄み感じた八重樫の“徹底ぶり”――敗れてもなお称賛したくなる存在

[ 2020年9月2日 05:30 ]

WBC・WBA世界ミニマム級タイトル統一戦後、井岡(右)と健闘をたたえあう八重樫
Photo By スポニチ

 ボクシングの元世界3階級制覇王者、八重樫東(37=大橋)が1日、オンラインで記者会見し、現役引退を表明した。

 【記者フリートーク 元ボクシング担当・中出健太郎】勝負の世界、特に格闘界では「敗者には何もやるな」が鉄則だ。安易な同情は血のにじむ努力や命も危険にさらす覚悟を、むしろ踏みにじる。だが、八重樫は敗れてなお称賛したくなる存在だった。

 壮絶な打撃戦に持ち込み、勝っても負けても顔面はボコボコ。せっかく獲得した世界王座の初防衛戦でホープ井岡一翔との統一戦に臨み、世界中から恐れられたロマゴンの挑戦も受けた。その心意気以上に凄みを感じたのは、リングに上がるまでの戦略、体づくり、練習、コンディショニングの徹底ぶり。100%はないとばかりに常に工夫を考え、難しいと見れば切り替えて最善の手を探る。打撃戦もその選択肢の一つだ。忍耐や努力とは少し違う、心身ともに過程から最高の充実を追い求めた姿勢が激闘を生んだ。「ボクシングで人生が豊かになる」――。そんな人を見たら、魅了されるに決まっている。(スポーツ部専門委員)

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2020年9月2日のニュース