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伊藤 日本人37年ぶり!米で世界王座奪取 無敗相手に大差判定

[ 2018年7月30日 05:30 ]

WBO世界スーパーフェザー級王座決定戦12回戦   ◯同級2位・伊藤雅雪 判定 同級1位クリストファー・ディアス(プエルトリコ)● ( 2018年7月28日    米フロリダ州キシミー )

WBOスーパーフェザー級王座決定戦でディアスに判定勝ちし、喜ぶ伊藤
Photo By ゲッティ=共同

 世界初挑戦の伊藤雅雪(27=伴流)がディアスを判定で下し、新王者となった。4回に強烈な右ストレートでダウンを奪うと、最後まで主導権を譲ることなく、23戦無敗のホープを圧倒した。米国で日本人選手が世界タイトルを獲得するのは37年ぶりの快挙。東京の下町・亀戸にある小さな「伴流ジム」所属のボクサーが米国で大きな夢を実現させた。

 高揚する気持ちを抑えきれなかった。世界的プロモート会社・米トップランク社と契約する期待の新鋭を敵地で撃破し、世界最速12戦目で3階級制覇したロマチェンコが返上したベルトを獲得。伊藤は汗と涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら両手を突き上げた。

 「信じられないことが起きた。不安もたくさんあって試合前は1人で泣いていた。絶対に世界チャンピオンになると信じて戦った」

 3年前から試合前の慣例となった米ロサンゼルス長期合宿で培ったボクシングが実を結んだ。前に出て連打で倒すスタイルのディアスに対し、「距離を支配したい」と話していた伊藤が選択したのは接近戦。かつて「ワンツーだけ」と言われた男は、磨きをかけた3発目、4発目を入れ、4回には3発目の右ストレートでダウンを奪った。KOは逃したものの最後まで攻めの姿勢を貫き、大差の3―0判定勝ちを収めた。

 世界的に層が厚いスーパーフェザー級で昨年12月、尾川堅一(帝拳)がIBF王座を獲得。伊藤はその試合を米ラスベガスで視察した。ドーピング違反で王座獲得は無効となったが、同階級のライバルに「先を越された」の思いを抱き、「僕だって越えられると思うし、越えなきゃいけない」と決意。尾川の記録が抹消されたため、伊藤が37年ぶりに米国で世界王座を獲得した日本人選手となった。

 伴流ジムにとっても、世界戦は創設20年目で初めて。先月18日の発表会見で団太路会長は「うちのジムから世界挑戦する選手が出る日が来るとは思っていなかった」と感無量の表情を浮かべていたが、挑戦だけでは終わらなかった。

 「人生が変わったと思う。今は夢の途中。与えてもらえるならデカい試合をしていきたい」

 そう話す伊藤に、トップランク社のボブ・アラム・プロモーターから「初防衛は(日本への)凱旋になるだろうが、その後は我々の興行で戦ってほしい」とラブコールも届いた。下町の小さなジムから誕生した世界王者には、夢の続きが用意されている。

 【伊藤 雅雪(いとう・まさゆき)】

 ★本名 伊藤 雅之

 ★生まれ 1991年(平3)1月19日、東京都江東区出身

 ★家族 高1から交際していた衣理香さん(28)と駒大在学中に結婚。現在4歳と2歳の娘2人がいる

 ★スポーツ歴 3歳から小6まで器械体操と水泳、小6からはバスケットボールに熱中。駒大高へはバスケのスポーツ推薦で進学。身長1メートル74ながらダンクシュートができるほど運動能力は抜群

 ★ボクシングとの出合い 高3の秋に自宅から10分ほどの場所にあり、いとこが練習生だった伴流ジムに入会。当初は「大学生の間だけのつもりだった」

 ★リングネーム 本名の「雅之」でデビューも、プロ2戦目の直前に交通事故に遭い試合中止。先代会長の勧めで「雅雪」に変更

 ★サイズ&タイプ 身長1メートル74、リーチ1メートル74、右ボクサーファイター

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