佐藤完勝　最終回暗闇アクシデント何の　自在テクニックでＶ２

試合後、浩子夫人や子供たちと記念写真に納まる佐藤

ＷＢＣ世界スーパーフライ級タイトルマッチ１２回戦 ○佐藤洋太　判定　赤穂亮●

（12月31日 東京・大田区総合体育館）
　照明が落ちるアクシデントの中で行われた最終回。暗闇に浮かぶリングのコーナーに佐藤はいた。一見、追い詰められているように見えたが、それは佐藤の計算とサービス精神による作戦だった。序盤から左ジャブで相手の出はなをくじき、懐に入らせなかった。終始ポイントでリードし、８回を終えて、全３人のジャッジから５点以上のアドバンテージがあった。最終回に入る前、佐藤は新井トレーナーに聞いた。「１回、ダウンしても大丈夫ですか？」。新井トレーナーは「バカかと思った」と止めたが、ゴングが鳴ると、佐藤は捨て身でコーナーに赤穂を誘い込み、強打を振らせた。

　「決めにくるんで、パンチが大きくなるんですよ。こっちはアッパーかフックを見極めればいい」。「マジカル・ボックス」の異名を持つ変幻自在な上体の動きでパンチをかわした。カウンターで仕留めるところまではいかなかったが、最後は大観衆を沸かせて２度目の防衛を決め「周りはハラハラするんで、おいしいんですよ」と傷ひとつない顔をほころばせた。

　１１年８月に対戦予定だったが、赤穂の右拳の負傷で流れた因縁の対決。元不良少年同士で舌戦も繰り広げられたが、終わってみれば王者の完勝だった。試合後は同じ階級のＷＢＡ王座を奪取したばかりの河野に「ベルトを２本もらいたい」と宣戦布告。夢プランをぶち上げた。

　【佐藤―赤穂戦ＶＴＲ】スピードとテクニックで上回った佐藤が大差の判定勝ち。鋭い左ジャブを何度も当てて主導権を握り、軽やかなフットワークで距離を保った。コーナーに追い込まれても巧みに避ける技術が光り、致命的なパンチをもらう場面はなかった。赤穂は間合いを詰められず、手数が少なかった。最後まで攻めに工夫がなく、大振りの左フックも見切られた。

　◆佐藤　洋太（さとう・ようた）１９８４年（昭５９）４月１日、岩手県盛岡市生まれの２８歳。盛岡南高でボクシングを始め、高校時代にはインターハイ８強、国体３位。東北学院大を中退し元ＷＢＡ世界スーパーバンタム級王者・佐藤修に憧れ協栄ジム入門。０４年プロデビュー。１０年５月に日本スーパーフライ級暫定王座。１２年３月に王者スリヤン（タイ）に判定勝ちしＷＢＣ世界スーパーフライ級王座。家族は浩子夫人（２７）、長男・洋人（ひろと）くん（６）、次男・桜人（さくと）くん（３）。１メートル７１の右ボクサーファイター。